2012-12

ブログには書けないこと

私達の仕事は大きく分類すると葬儀会社という枠組みになります。

そのような仕事柄、スタッフブログと言えど、ご依頼者であるペットを亡くされた遺族の方々も目にされることがあるので、あまり砕けた題材は書かないようにして参りました。

その最たるものが葬儀にまつわる面白エピソードの数々です。

何度もこのブログでお伝えしたことがあるのですが、私のことをブログでしかご存知ない人は文面のイメージから「女性的な人」と想像されていることが多く、それは「死」と「命」という尊い事柄をテーマにしているブログである以上、言葉選びには自ずと慎重になり、結果的に女性的な言葉使いを多様するのが、その一因だと思っています。

私は支配人の言葉を借りると「大きな子供」らしく、仕事を離れると面白トークが大好きで、いつも、どうでもいいような話をスタッフ達とするのが好きな女性的とは程遠い体育会系部活の練習終わりの部室のワイワイガヤガヤの雰囲気が好きな男であります。

10日に書いたブログの中でも触れたのですが、私達の仕事に笑いは禁物で飼い主さんとの会話の中で笑みを浮かべることはあっても声を出して笑うことは許されないものであります。

しかし、私も人間である以上、どうしても笑いを堪えれないような場面は過去に何度もあり、それは前々回のイタチのイタちゃんの時と同様、亡くなったペットちゃんの名前が「なぜそんな名前を・・・」と耳を疑うような名前を飼い主さんから聞かされるときがもっとも多く、申込書のペット名前欄に記入する際、笑いを堪えるあまり、手が震えて文字が書けなくなったこともありました。

不謹慎のこととは承知しておりますが、そのようなエピソードから飼い主さんからもブログに掲載することを承認していだいた、私の失敗エピソードを今回は紹介させていただきます。

 

それは22歳で永眠した大東市のKさんの愛猫のお葬儀での出来事でありました。

猫では大往生とよべる年齢であり、眠るように安らかに逝ったこともあってか、Kさんは葬儀の席であっても終始穏やかで、時折、涙ではなく笑顔を見せて愛猫ちゃんの生前の話を私に聞かせてくださいました。

私はKさんと肩を並べるようにして藍猫ちゃんが寝かされている祭壇の前でお話を聞いていたのですが、Kさんが愛猫の顔を優しく撫でながら「ゆっくり眠りや。ヨウコ」と声をかけたときです。

私は依頼書を手に話を伺っていたので「猫ちゃんのお名前はひらがなですか?」とKさんに確認をしました。

というのは、ペットの名前は飼い主さんによってイメージが確立されているものであり、おなじ呼び名であっても「ヨウコ」なのか「ようこ」なのか、はたまた「YOKO」なのかは飼い主さんによって違ってきます。

位牌等のご供養備品に書く際に間違いがあってはならないので、お名前の確認は仕事上、必ずさせてもらっているのであります。

Kさんは「私の中ではカタカナで(ウ)ではなく(-)です。つまり「ヨーコ」です」とお答えになられたので、私は「素敵なお名前ですね」と素直な感想を述べました。

そして不意にKさんが「なぜヨーコにしたかわかります?」と私に問いかけられました。

私は祭壇のヨーコちゃんの方に目をしたまま考えたのですが、見当がつかなかったので「いえ。わかりかねます」と正直にお答えしました。

するとKさんが座ったままの姿勢で祭壇に少しだけ近寄り、ヨーコちゃんの顔を優しく両手で包むようにしながら私の方に向けるようにて「似てるでしょ?オノ・ヨーコに」と仰ったのです。

予想外の返答に私は「あの・・・オノヨーコってジョンレノンの奥さんの?ですか?」と小さな声で聞き返しました。

「そう。そのオノさんからとったの。ヨーコって仔猫のときから少しエラが張っていて顔が大きい仔だったんですよ。で、寝顔がオノ・ヨーコに似てたから『ヨーコ』って名前にしたんです」と微笑みながら教えてくれました。

確かにヨーコちゃんは骨格のしっかりした、横広の菱形のような顔立ちの猫ちゃんで、顔も標準より大きめでありました。

そして、Kさんにそう言われてみたらヨーコちゃんはオノヨーコさんにそっくりで、というか、言われてからはオノヨーコさんにしか見えなくなってしまい、あまりのソックリ加減に私は思わず笑いそうになってしまったのです。

しかし、不謹慎にあたるのは重々に理解していたので、私は目をつぶり、拳に力をこめて手を握りながら笑うのを堪えました。

Kさんは私のやや前方に座っていたので、その位置から私の表情は見えないことも幸いして、Kさんにも笑いを堪えているのを悟られずに済みました。

私は数秒間で、気持ちを持ち直し、目を開いて再びヨーコちゃんの顔を見たのですが、やはり似ているので、私はあえて、ヨーコちゃんの顔から、目を反らすように祭壇のロウソクの灯に目をやり、意識を集中させることにしました。

意識を集中し、真顔に戻ったことを自覚できた私はKさんに「ではそろそろお焼香のほうに火をつけますね」と伝えました。

Kさんは「はい。お願いします」と祭壇の前から後ろずさりするように場所をあけてくれたのですが、そのときKさんが鼻歌をうたうようにジョンレノンの名曲「Imagine(イマジン)を口ずさんだのです。

せっかく払拭できたオノヨーコさんの顔が再び脳裏に浮んできて、私は堪えきれず「ブブッ」と噴出してしまい、その息でロウソクの灯を消してしまったのです。

なんて失態を犯してしまったんだと思った私は慌てて「すいません。すぐに灯し直します」と土下座をして謝罪しました。

しかしKさんは私を咎めることなく「いいですいいです。気にしないで下さい」と仰ってくださいました。

そう言われ、私が顔を上げたらKさんも笑っておられ「ね?ほんまに似てるでしょ?」と許して下さったのです。

そのようなヤリトリがあったせいか、ヨーコちゃんのお葬儀とご火葬は終始穏やかに進行し、とても温かみの感じれるものでありました。

 

ペットの訃報は悲しいことに変わりはありませんが、ペットが幸に満ちた生涯を長生きの末、安らかな形で死を迎えられたとき、飼い主さんは責任を果たすことが出来た満足感からかKさんと同じように涙ではなく、笑顔でお見送りされることもあるのです。

事実、弊社プレシャスコーポレーションでご依頼を請けたセレモニーでも全体の3割は穏やかな笑顔に包まれたものであり、人間の葬儀に例えるなら皆から愛された優しい長寿のお祖母ちゃんの告別式で見られる、穏やかな雰囲気に似ているのかもしれません。

私の失敗談は今回のこと以外にもたくさんありますが、今までに大きなクレームに発展したようなことだけはありません。

それは弊社が推奨実践しているのが引取葬儀ではなく家族立会いの家族葬であるからだと私は思っています。

つまり、ペットを喪った家族様と同じ気持ちでお弔いをすることで、同じように悲しみ、時には笑顔を交えてお話をすることで、セレモニーが終わる頃には私達の理念や心がちゃんとご家族に伝わっているからこそ、我々の失敗を「手抜き」ではなく「悪意のないミス」との判断をしていただいているからだと私は感じているのです。

プレシャスコーポレーションのご依頼件数は創業以来右肩上がりで増加しています。

我々の実績にはペットの死が伴っていることなので、ご依頼が増えていることを「嬉しい」と表現するには不適切なことになるのかもしれません。

しかし、我々プレシャスコーポレーションにご依頼くださる7割以上の人は過去に弊社にご依頼してくださった方やそのような方々からの紹介者であり、それは我々の志事が評価されての結果であるので、私はそのことに素直に喜びを感じております。

死因を知る勇気

弊社プレシャスコーポレーションが設立以来、センサーや温度計に頼った自動火葬ではなく、目視による手動火葬を徹底してきたのは過去にこのブログでも何度もお伝えしてきたことなのですが、その最大で唯一といってもいい理由は「少しでも多くの形見(遺骨)を残してあげたい」という亡くなったペットちゃんとその飼い主さんへの想いからであります。

火葬という儀式を終えた後、可能な限り骨格の原型に近い形で遺骨を飼い主さんにお渡しするのは、とても大切なことだ私は思っております。

もちろん、遺骨は最終的にはお墓に入ったり、土に還されることになるのは理解したうえでのことでありますが、それらの時期と遺骨の処遇のご判断を下せるのは亡くなったペットちゃん飼い主さん家族であり、我々火葬を請け負う会社ではありません。

そのような理念の下、私達は飼い主さん立合いのうえでの手動火葬を徹底して参りました。

そのような火葬の流れの中で、頻繁に火葬炉の小窓を開けてチェックする際に、亡くなったペットちゃんの病気や患部を目視することは必然的なことであります。

事前に死因を飼い主さんから説明を受けた場合は、火葬前に説明するのですが、何もお聞かせいただけないまま、火葬に入った場合、腫瘍などの患部が見受けられた段階で火力の電源を切り、どのように処置するかの判断を仰ぐようにしております。

というのは腫瘍や血液等が固まって物質化した物が体内に残っていた場合、その部分が完全に無くなるまで火葬を続けることは、既に骨になった部分までも必要以上に炎で焼き続けることを意味し、その結果、患部付近のお骨が燃え尽きたり細かく砕けたりするなどの影響を及ぼすことになるからであります。

ほとんどの飼い主さんは少しでも多くの遺骨を残してあげたと願うものでありますが、多少、お骨に影響しても患部を焼き尽くしてほしいと望まれる方と、患部が多少残ってもいいから、その付近のお骨も出来るだけ残してほしいと望まれる方の意見は分かれます。

意見の相違は「ペットを苦しめた腫瘍は見たくない」というお気持ちと「ペットはどのような病気を患っていたのかをこの目で見たい」というお気持ちの違いからくるものであり、どちら共にペットちゃんを大切に想う気持ちには変わりなく、価値観と捉え方の違いであるので、どちらが正しいという問題ではありません。

私達はどのような場合であっても飼い主さんの意思を尊重することを重視しておるので、飼い主さんのお気持ちに沿った火葬をするようにして心掛けてまいりました。

ですので、飼い主さんから事前に体内に腫瘍が残っていると報告を受けた場合は、その対処をどのようにされるかを確認してから火葬をするのですが、事前に報告が無かった場合とや飼い主さん自身もその事実(腫瘍の存在)を認識をされていない場合、直ちに火葬を中断し、その報告と先に述べた対処方の選択のご相談させてもらうのであります。

定期的に病院で検査を受けていたペットちゃんを除いて、飼い主さんがペットが腫瘍を患っていた事実を認識されていなかったケースは、以外と多く、火葬をして初めてそのことを知ったという飼い主さんも少なくはありません。

もちろん、我々は医師ではないので、その患部が直接、死因に繋がったかどうかの判断は出来かねるので、断定的な事は決して口にしませんが、飼い主さんは、それ以前にその事実に気付いてあげれなかった自分に対して責任を感じられるものであります。

前触れもなく、亡くなったペットちゃんの死因を知りたいと願う飼い主さんの気持ちは責任感の表れだと思うのですが同時にそれを知ることは勇気がいることだと私は思います。

なぜならば、その原因の一端が自分にあったと知る結果にもなる場合もあるからです。

しかし、それでもペットがどうのような状態で旅立ったのかを知るというのは飼い主さんにとっても大切なことだと思いますし、特に複数のペットを飼われている人なら、そのペットの死因が教訓となって自身の飼い主としての自覚に繋がっていくことにもなるのです。

自覚と責任感を持った飼い主さんが増えることは喜ばしいことであり、私はそのような飼い主さんが一人でも多く増えることを心から願っております。

60日の命

捨て猫や迷い猫だった猫を家に連れて帰って飼われた経験のある人なら理解できると思うのですが、そんな猫たちとの最初の出会いは目ではなく耳で感じたのではないですか?

つまり、猫の鳴き声に呼ばれ、その存在に気付いたのが始まりであったという意味です。

 

門真市のFさんもそんな経験をしたお一人でした。

その日、Fさんは、いつものように仕事場に自転車で向かう途中、信号待ちのときに、か細い鳴き声に呼び止められました。

声のするほうを振り向くとマンションの玄関前の植木の花壇の上で、その子猫は鳴いていたのです。

仔猫はそこから降りれないのか、震えながらFさんに助けを呼ぶように鳴いていたそうです。

朝のラッシュ時ということもあり、人通りも車の通行量も多い時間帯であったことから、おそらく見かねた通行人の誰かが仔猫をその花壇に避難させてのであろうとFさんは思いました。

信号が青に変わりFさんが自転車のペダルに足を置いたとき、子猫は「いかないで」とばかり、いちだんと大きな鳴き声をあげました。

Fさんは迷いました。そして「どっちにしても、公園とか、少なくとももう少し車が少ない場所に避難させてあげよう」と決め、子猫を自転車のカゴに乗せ、職場に向かいました。

自転車でFさんは「どこか安全な場所ってあったかな」と考えをめぐらせ通いなれた通勤路を辺りを見渡しながら走りました。

しかし、職場に向かうまでに、そのような場所はなく、Fさんは子猫を連れて出勤することにきめました。

仕事場の責任者に事情を説明し、「この日だけ」ということで、仔猫を職場に入れることを許可してもらいました。

昼休みのときには仕事場の同僚達がFさんと仔猫のもとに集まってきて、まだFさんが仔猫を飼うと決めたわけでもないのに「病院でワクチンうってもらいや」とか「ミルクは専用の哺乳瓶がないと上手く飲めないよ」とアドバイスをくれるのでした。

Fさんは最初、社内で仔猫の里親になってくれる人を探そうかと思ったのですが、皆からアドバイスをもらううちに、そのことを忘れ、仕事が終わったころには、すっかり仔猫と一緒に暮らす心構えになっていたそうです。

そして、同じように猫を飼っている同僚から教えてもらった動物病院へ行き、仔猫の健康診断とワクチン接種をうけました。

医師の診断によると、仔猫は生後2ヶ月未満らしく、全体的に弱っているとのことでした。

Fさんは病院かも出された粉の栄養剤と市販のスープ状のフードを購入し、医師から言われた通り規則正しく食事をとらすことを心掛けようと思いました。

自宅に戻って仔猫が栄養剤とスープを飲んでくれたとき、なぜか、Fさんは涙がでたそうです・・・

私が思うにFさんは命というものに触れ、こんなに小さくても必死で生きようとしている仔猫の姿に感動したのかもしれません。

Fさんは、その夜、仔猫ちゃんにパミュと名付けました。

その翌日は休日ということもあり、Fさんは仔猫を小さな布のバックにスリース素材のマフラーと一緒に入れ、近くのペットショップに買物に行きました。

動物病院の医師や猫を飼ってる同僚から教えてもらったフード類やベット等、数点購入し、自宅に戻りました。

自分のベットのすぐ隣に仔猫のベッドを置いて、こらから始まるパミュちゃんとの新しい生活に胸を踊らしてFさんは眠りについたそうです。

翌朝、目が覚めてFさんは真っ先にパミュちゃんのベッドを覗きました。

Fさんは布団に入ったまま、顔だけをパミュちゃんのベッドに寄せ「おはよう」と声をかけたのですが、パミュちゃんはぐっすり眠っているようで、Fさんの呼びかけに何の反応も示さなかったそうです。

少し気になったFさんは半ドーム状になっているパミュちゃんのベッドの屋根をめくって様子をうかがいました。

するとベッドの底にパミュちゃんがオシッコかウンチをしたのか、黄ばみた汚れがありました。

Fさんは布団から出ておそるおそるパミュちゃんの体を指で優しくつつきました。

指から伝わった感覚は冷たく固い感覚だったそうです。

慌ててFさんはパミュちゃんをベッドから出し抱き上げました。

パミュちゃんの首は力なく垂れ下がり口元はベッドの底にあったのと同じ黄ばみた嘔吐物と思われるものが付着していました・・・

何がなんだかわからなくなってしまったFさんは泣きながら猫を飼っている同僚に電話をして、事態を伝えました。

同僚さんは「だいぶ弱ってて、寝ているときに食べたものをもどしたのかもしれない・・・そのとき喉につまらせて・・・そのまま・・・」と途中まで説明をして声を詰まらせたそうです。

プレシャスコーポレーションにお葬儀とご火葬のご依頼の電話を下さったのは、この同僚の人でありました。

ご費用も同僚さんをはじめ会社の社員さん達が少しずつ出し合ってFさんに渡されたそうです。

パミュちゃんのお葬儀にはFさんと同僚さんのお二人が参列され、ご火葬も一緒にお立合いされました。

ご火葬が終わり、お骨あげはFさんの自宅で行なったのですが、そのとき、真新しいパミュちゃんのベッドや買って来たまんま、袋の中に入っているネコジャラシのオモチャを目にして私は胸が詰まりそうになりました。

パミュちゃんの一生は60日にも満たない短かなものではありましたが、最後の2日間はFさんや同僚さん達の愛と優しさに包まれた時間であったに違いありません。

もし、その朝、Fさんがパミュちゃんに気付かずに通り過ぎていたなら、パミュちゃんは人の温もりを知らずに生涯を終えていたでしょう。

そう思うと、その儚い一生の中で、パミュちゃんがそれを知り、包まれながら旅立てたことに、私は微かな喜びに似た感情を覚えたのでした・・・

 

パミュちゃんの遺骨は当社で取り扱っている中で一番小さな2寸の骨壷に納められ、年明けにプレシャス会館に納骨されることになりました。

初めての体験 その2

Mさん宅には8時少し前に到着しました。

家の玄関先に女性が一人いらっしゃったので、私は「プレシャスコーポレーションの野村です」とご挨拶をしました。

その女性は「こんにちは。Aです。はじめまして」と頭を下げながら挨拶をしてくださいました。

私はてっきりMさんだと思っていたのですが、そのAと名乗った女性はMさんに当社のことを推薦してくださったMさんの友人の方でありました。

私は「この度は当社をご推薦していただきまして誠に恐縮でございます。失礼がないようお別れのお手伝いをさせていただきます」とあらためてご挨拶をしました。

Aさんはで「いつもブログ読んでます。すごくちゃんとされた会社だと思ってMちゃんに『ここがいいよ』って言ったんです」と笑顔で仰いました。

そして「それに」と前置きをされてから「私も猫を飼ってるんで、万一のときは火葬してあげたいんで、訪問火葬がどういうものか見たかったんです。それでMちゃんにお願いして来させてもらったんです」とAさんはハキハキとした口調でご参列された経緯を話してくれました。

私がAさんと話してると玄関のドアが開いてMさんが現れました。そして「あ!Aちゃん。来てたん?」とAさんに話しかけられました。

「今着いてん。そしたら車が停まったから、きっとプレシャスさんの車やと思って、今、挨拶しててん」とAさんはMさんに説明をしてました。

私は二人の会話は途絶えたタイミングでMさんにご挨拶をしました。

Mさんは「すいません電話では・・・よくわかってなかったもんで・・・で、どうすればいいですか?」と不安そうな表情で私に尋ねられました。

私は「まずお亡くなりになったペットちゃんに手をあわさせてもらいたいのですが、どこで安置されているのですか?」とお聞きしました。

Mさんは玄関を指差し「玄関に箱に入れて置いてます。それにペットではないんです」と仰いました。

それを聞いて私は率直に「ペットではないんですか?」とMさんにお尋ねしました。

Mさんは恥ずかしそうに「ちょど1年くらい前から家に居着いたみたいで、お父さんがイタチは家の守り神だからってエサをあげるようになって・・・」とそこまでMさんが話した途端、一緒に聞いていたAさんが口を押さえて「イタチが守り神って聞いたことないで」と笑いだしました。

Mさんは「笑わんとってよ。私も言うてて恥ずかしいねんから。誰にも言わんとってな」とAさんの肩を軽く押すようにして言いました。

「ごめん」と謝ったもののAさんはひたすら笑っていました。

私は二人の会話に割り込むように「でもね。Aさん私の亡くなった父も生前は飲食店を営んでたんですけど、その店にイタチが住み着いていたんですよ。で、父が『イタチ1匹がおったらネズミとゴキブリがいなくなるから助かる』って言ってましたよ」と言いました。

Aさんは「へ~そうなんですか」と感心するように頷いておられました。

MさんとAさんはかなり仲の良い友人同士のようで、その後も何度か同じようなやりとりを繰り返すように話していました。

 

Mさんから聞いた話を簡単にまとめてみると、ちょうど1年前にイタチを玄関先で頻繁に目撃するようなり、それを見たお父さんが鶏肉等をイタチの通り道に置いておくようになりました。

次第にイタチも慣れてきてMさんの家族を見ても逃げなくなったそうです。

イタチというのは警戒心が強い動物で、普段、ほとんど見かけることはありません。

ましてや人間が餌付けできることは、ほとんどなくMさんの家のイタチの行動は、ごく稀なことであると思います。

AさんとMさんがそんな会話をしているとき、Mさんのお父さんがイタチの亡骸を入れたお手製の棺を手に玄関の扉から出てこられました。

私が挨拶をしようとする前に友人のAさんが「あ!お父さんお久しぶりです」とMさんのお父さんに歩み寄られました。

「おAちゃん。久しぶりやな。わざわざ来てくれたん?」と笑顔で応対されてました。

Aさんは、Mさん家族とかなり親しいようで「いや別にイタチの葬儀に来たんじゃなくて、ペット火葬ってどんなのかを見たかってん」と笑いながら本音で話されていました。

お父さんも、そんなAさんの言葉に不快になれれるようなことはなく「そうか^^おっちゃんもはじめてやねん。まあ見て行きや」と仰いました。

私はMさんのお父さんともご挨拶を交わし、セレモニーの打ち合わせをしました。

お父さんは「わざわざ玄関前のワシらの目に触れるとこで息絶えてたから、それなりにこの家に愛着もってくれてたんかなって思いまして・・・最初は保健所に来てもらうことも考えましたんやけど、なんかちゃんとしてあげたくなって・・・まあ、ちゃんと言うても火葬して骨を拾ってやって家の庭先にでも埋葬してやることくらいしかできないけど」と目を細めながら仰っておられました。

そして、その後、私はお父さんから棺を受け取り、夜間ということもあって、自宅では執り行わず近くの淀川の河川敷で火葬することになりました。

Mさん家族は立会いをされず、自宅で待機されることになったのですがAさんが「ペット火葬がどんなものか見たい」と申し出られたので、私はAさんを助手席に乗せ河川敷に向かいました。

火葬は30分ほどで終わったのですが、Aさんは火葬車に興味津々のようで、燃料のことや火葬炉の仕組みのこと等、疑問に思われたことを、いろいろと質問をされてました。

火葬が終わりMさん宅に戻る途中Aさんは「火葬っていうくらいだから火とか煙が出るもんだと思ってたんですけど、ぜんぜん出ないんですね」と不思議そうに尋ねられました。

「住宅街で火葬することを前提に設計されてるんで、「火」「煙」「臭い」を出さない造りになっているんですよ」と答えた私にAさんは「うちも猫がいるんで、その時はお願いします。よかったら名刺くれません?」と言われたので私はAさんに名刺を渡しました。

Mさん宅に着いて遺骨の納められた骨壷をお父さんに渡したとき、お父さんは合掌をしてから大切そうに受け取っておられました。

AさはMさんに火葬の様子を熱心に説明されていたのですが、河川敷に移動する前に私がMさんに記載をお願いした火葬依頼書を見たAさんが「これ!」と言ったまま、また笑い出しました。

「どうしたんですか?」と私がAさんに尋ねたところAさんはMさんが持っていた依頼書を取り私の方に差し出しました。

そしてAさんは依頼書の{ペット欄}のところを指差し「これ『ペットちゃんの種類(イタチ)』『ペットちゃんの名前(イタチ)』ってそのままやん!名前くらい付けてあげーや」と笑いながらMさんの肩を叩きました。

Mさんは口を尖らせながら「だって。。。いつもイタチとしか言うてなかったもん。。。」とボソボソっと恥ずかしそうに言いました。

Aさんは再び笑いのツボに入られたようで「てか、男の子やったん?女の子やったん?」とMさんに尋ねました。

Mさんは「わからん。。。私は女の子ってイメージで接してたけど。。。」と言ったときMさんのお父さんが「ワシは男って思ってた」と口を挟むように仰いました。

そのときAさんの笑いはピークに達したようで、その場にしゃがみこみ体を振るわせるように笑っておられました。

お父さんは私の方を向いて「あのどっち(男か女)かわかりはります?」といきなり尋ねられたのですが、私も性別を確認していなかったので「すいません。確認するの忘れておりました」と正直に答えました。

「私の知ってる骨の専門家に聞けば遺骨からでも性別は判明しますよ。もし、遺骨を預からせてもらえたら確認しますが」と私が伺ったところお父さんは「いえいえ構いません」と恐縮するように仰られました。

そして、Mさんとお父さんは名前を付けてあげるべく、候補を挙げられてたのですが、Aさんはその間もひたすら笑ったままの姿勢でおられました。

私の立ち居地からMさんとお父さんの後ろで笑っているAさんの姿も視界に入るので、釣られ笑いをしてしまいそうになったのですが、私の仕事柄、遺族との会話の中で顔に笑みを浮かべることがあっても声を出して笑うことは許されないので、必死に堪えました。

私は意識してMさんとお父さんの会話に集中したのですが、Mさんとお父さんが「女ならイタ子。男ならイタオとかイタ郎とかかな」と相談してたとき、依然として笑ったままのAさんが「それ橋幸夫やん」と声をひっくり返しながら指摘しました。

私もMさん親子の会話を聞いて全く同じことを連想していたので、このときは不謹慎にも堪えきれず笑ってしまいました。

慌てて気を取り直し「失礼しました」と御詫びしたのですがAさんに指摘されたMさん親子も「ほんまや」と声を出されてお笑いになられたので、救われる結果になりました。

最終的に、名前は「イタちゃん」と決まり、お父さんが庭先に掘った穴の中にイタちゃんの遺骨は埋葬されることになりました。

Aさんの登場で、セレモニーは終始、和やかに進行することができました。

Mさん親子も最後は笑顔になられ「やっぱりちゃんと火葬してあげれてよかった」口を揃えて満足そうにそう仰っていました。

何はともあれ、私にとっての初めての経験であるイタチの火葬を無事に終えて、帰りの車中で私はほっと胸を撫で下ろしたのでした。

初めての体験 その1

今までに私はペットと呼ばれるあらゆる動物の火葬を承ってまりました。

ペットの代表である犬ちゃんや猫ちゃんはもちろんのこと、同じ哺乳類ではリスザルやうさぎ、小動物と分類されるフェレットやハムスター。

そしてインコや文鳥などの鳥類、トカゲやヘビ等の爬虫類等、ありとあらゆるペット達の火葬に立会い、実施してきました。

スタッフ達が「逆に火葬していないペットのほうが少ないんじゃないですか」と言うように、ペットショップで販売されているペット達は、ほぼ全て実施済みであり、各ペット別の火葬マニュアルも作成しております。

そんな私が、初めての経験となる、ある動物の火葬を執り行ったときのお話を今回は紹介させてもらいます。

 

その火葬依頼のお電話がかかってきたのは、平日の正午過ぎでありました。

電話をうけた私はいつものように、一通り葬儀と火葬の流れを説明した後、ペットちゃんの種類を依頼者さんに尋ねました。

依頼者さんは守口市にお住まいのMさんという20代の女性でありました。

Mさんは、私の質問に「え~と・・・種類はイタチです」と小さな声でこたえました。

イタチと聞いて私は一瞬驚いたのですが、すぐに「はい。あのフェレットということですか?」と確認をしました。

Mさんは「いえ。違います。イタチです」とさらに小さな声で恥ずかしそうに言いました。

「はい・・・あの~・・・フェレットではなくイタチなんですね?」と私は再度、確認するように聞いたところMさんは「はいイタチです」とはっきり答えられました。

私は、最初、イタズラかとも思ったのですが、電話の向こうのMさんはいたって真面目な印象だったので私は「わかりました」と返事をしました。

そう返事をしたのはいいのですが、どうも腑に落ちない私は「イタチってあのイタチですよね?」と念をおすように聞きました。

Mさんは「どのイタチかわかりませんが・・・イタチっていっぱい種類あるんですか?」と困惑気味に答えました。

私も自分の質問が要点をついていないことに気付いたのですがイタチを形容する代名詞が思い浮かばなかったのです。

その結果、私は「つまり・・・民家の屋根裏や床下で生息している、あまり見かけることが少ないというか、深夜にサーーーっと走り抜けていくのをたまに見るイタチですよね?」と自分のイメージありきの説明をしてしまいました。

それは火葬依頼をするということはペットであることを意味しているわけであり「駆除業者の害獣指定でもある」と言ったような表現は失礼にあたると判断した結果のことでありました。

Mさんは戸惑いながらも「ああそうです。たぶんそれです」とお答えくださいました。

私は「わかりました。では、ご費用なんですが、フェレットと同じ扱いでさせてもらいたいのですが、大きさはフェレットと同じくらいですよね?」と確認をしました。

「私フェレットって写真でしか見たことないので実物知らないんですよ」とMさんはお答えになられたので、私は「だいたいでいいのでイタチの長さってわかりますか?」とさらに質問をしました。

Mさんは「ちょっと待ってください」と言いながら受話器を手で塞ぐようにしながら「お父さん。イタチの長さってどれくらい?」と父親に尋ねてました。

少ししてMさんは「長さってシッポもいれてですか?」と尋ねられたので「いえ、お尻まででもいいですよ。と言うかだいたいでいいので」と言った私の言葉の後半を聞く前に「お尻までやって」と家のお父さんに返事をされていました。

その後、Mさんは1分ほど電話を保留状態にされた後「お尻まで32cmでシッポもいれたら40cmくらいです」と息を切らせてお答えくださいました。

「ご丁寧にありがとうございます。ではフェレットとほぼ同サイズですのでご費用も同じになりますが、かまいませんか?」と私は料金の確認をしました。

当社ではフェレットはハムスターや小鳥同様の小動物に分類させてもらっており料金も最安値の設定をしております。

そして私は日程の確認をMさんにしました。Mさんは「出来るだけ早く来てもらいたいのですが・・・それともう一つ。野村さんって人はいますか?」と尋ねられました。

「はい私が野村ですが、私のことをご存知なのですか?」と伺ったところMさんは「いえ、ここを(当社のこと)教えてくれたのは友達なんですが、その子、猫を飼ってるから『どこかペットの火葬の会社を知らない?』って聞いたらプレシャスさんのことと野村さんのことを教えてくれたんです」と仰いました。

「ご友人が私のことを?もし差し支えなければその方のお名前をお聞かせいただけますか?」と私はMさんに尋ねました。

「Aっていう子なんですけど、たぶん、面識はないと思います。なんか野村さんのブログを読んでるらしくって『この会社面白いよ。野村さんって人がいろいろ書いてるねんけど私のとこの猫も、もし死んだらここに頼もうって思うてるねん』って言ってました」とMさんは言いました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

確かにプレシャスコーポレーションのスタッフブログは開始当社、スタッフ及び関係者。そして当社の同行を気にしている同業者くらいしか読む人はいなかったのですが、その後、当社でお葬儀を執り行い、ブログで紹介させてもらったペットちゃん達の飼い主さん家族の方々やその友人知人に広がり、今年に入ってからはHPの管理を担当しているスタッフから「私達の活動を知ってもらうために、もっとブログをオープンにしましょう」と提案があってブログの総合掲載サイトに登録をすることになりました。

私はインターネットのことはあまり詳しくないので、ブログを書くだけで、それらの管理は担当スタッフに全て任せています。

最近になって私や当社と直接は関係のない、いろんな人が読んでくださっていることは知っていたのですが、このような形でご依頼があったのはこのときが初めてでありました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「私の会社が面白い?」と私が聞いたところMさんは慌てて「いえ、会社が面白いって言う意味じゃなくてブログが面白いって言いたかったんだと思います。すごく良い会社って意味やと思います」と補足するように言ってくれました。

私は「わかりました。いずれにせよ有難いことです。では、私が担当させておうと思いますが、私は早くても夜にしか時間がとれませんので、20時くらいのご訪問になりますがかまいませんか?」と確認をし承諾してくださったので、その日の夜にMさん宅に伺うことになりました。

私はイタチの火葬が初めてということもあったので、念のため当社で一番火葬実施回数が多い支配人に電話をして、意見を伺うことにしました。

携帯で支配人に電話をし「ねえ支配人。今までイタチの火葬ってしたことある?」と尋ねました。

支配人は「フェレットでしょ?しょっちゅうしてますやん」と何を今更という感じで答えました。

「いやいやフェレットじゃなくイタチや」と言ったところ「イタチってあのイタチですか?」と私がMさんにしたのと同じような質問をしたので私は思わず笑ってしまいました。

支配人は「イタチ?イタチはないですけどイタチの依頼が入ったんですか?」と信じられないような声で私に尋ねました。

支配人は続けるように「野村さんまたつまらんウソで僕をからかってるんでしょ?」と呆れたように言ったので「ウソつくならハリネズミとかツキノワグマみたいな洒落の利いたウソつくわ。本当にイタチの依頼が入ったんやって」と私は言いました。

支配人は「マジで言うてはるんですか・・・?それいつですか?」困惑を隠さず言いました。

私は「今日や。しかも僕の御使命なんや」とこたえました。

支配人は自分が担当でないことを察した途端「まあイタチっていうてもフェレットと同じですよ。だって野生のイタチを家畜やペット目的で改良されたのがフェレットなんですもん」と饒舌に話し出しました。

さらに支配人は「イタチはうちにとっての初仕事なんでよろしくお願いします!無事に終わったらマニュアルの作成もお願いします!」と声高々に話すので私は少しイラっとなって「はいはい。わかったわかった。もういい」と途中で電話を切りました。

電話を切ってすぐ支配人からメールが入り「イタチもフェレット同様、序盤は最低火力で始めてくださいネ♪おねがいしま~~~す^-^」と書いてありました。

返事する気もしないまま私は携帯を机に放り投げパソコンでイタチのことを検索しました。

そして、予備知識を備えその夜、私はMさん宅に火葬車で向かったのでありました。

 

ブログのスペースが限界に達したので、その後の話や、Mさん家族とイタチの出会いのお話は次回ご報告します・・・

ペットがペットを襲うとき

ペット葬儀の仕事をしていると、とてもやりきれない事実に直面することがあります。

お亡くなりになったペットちゃんの死因を伺うことは、仕事上、避けては通れないものであり、時に、その理由が、同じ家で共に暮らすペット同士が引き起こしたアクシデントが原因であることも少なくはありません。

最近では種類の違うペットを同時に飼っておられる人も増えましたが、その典型がペットの人気を二分する犬と猫を一緒に飼われている人の存在です。

私は、お葬儀でいろいろなご自宅に訪問する機会があるのですが、犬ちゃんと猫ちゃんが共に同じ家で仲良く生活してる姿をよく目にします。

元来、あまり相性が良くないと言われている犬と猫でありますが、私の知る範囲では問題なく共同生活をしてると感じることのほうが多く、飼い主さんも、「多少の小競り合いは日常的にあっても、大事に至ることはほとんどありませんよ」と仰います。

例えるなら子供の兄弟喧嘩のようなものがほとんどで、命に関わるような争いに発展することはないということであり、事実、当社でも過去に請け負ったセレモニーで、そのことが原因で死に至ったという報告はほとんど受けておりません。

むしろ、同じ家で暮らすペット同士のトラブルで大事に至る場合、小鳥やハムスター等の小動物が犠牲になるケースが大半を占めます。

そして、結果的に危害を加えるたのは犬ちゃんであり猫ちゃんであるというのが、このようなアクシデントの典型的な組合わせであります。

本当に人懐っこく可愛らしい犬ちゃんや猫ちゃんを見ていると、ついつい忘れてしまいがちになってしまいますが、彼等には持って生まれた本能というものがあり、犬科も猫科も共に野生の世界では食物連鎖の上位に君臨している肉食動物の血筋であることに違いはありません。

 

もちろん、犬ちゃんや猫ちゃんと一緒に小動物を飼う場合、我々、飼い主側の人間が部屋を分けたり、仕切りを設けるなどして最善の配慮が必要になってくるのは言うまでもありませんが、ついついドアを閉め忘れたりしてしまうことは誰にでも起こりうることであります。

特に猫ちゃんの場合、小さくて動く物に対して異常なほど関心を示し反射的に前足で押さえつけようとする性質があります。

それは我々人間に例えると大きな音がしたときにとっさに頭を下げ、手で頭部を守ろうとする本能からくる行動と同じで、猫ちゃんのそのような行動は満腹時であっても変わらないことから、決して小動物を食べようとしてるのではなく、好奇心からそうしていると考えるのが妥当でしょう。

 

自分の飼ってるペットが同じく自分の飼ってる別のペットに危害を加えられ、不運にもそれが死に至ったとき、飼い主さんは、自分の不注意が原因で招いてしまったという罪悪感から、なんともやりきれない心情になられるものであります。

私は、そのような席で、もちろん命を落としたペットちゃんの悲運や自責の念に苛まれる飼い主さんにも心を痛めますが、部屋のすみっこで肩を落としてセレモニーの様子を見つめる危害を与えてしまった猫ちゃんや犬ちゃんの悲しげな姿を目にしたときには胸が締め付けらそうになるのです。

そんな猫ちゃんや犬ちゃんの目は「悪気はなかった・・・」「弾みでああしてしまった・・・」と訴えかけているようであり、ちゃんと今の状況を理解して、心の底から後悔と反省の念が浮かべているものなのです。

ペットは言葉を理解しているのではなく、「なんて取り返しのつかないことをしたのだ」という飼い主さんの心を読み取っているのです・・・

犠牲になってしまったペットのことを思うと、悲しい気持ちになり、冥福を祈ることしかできません。

しかし、悪気がなかったペットに罪を背負わして暮らしていくのは、違う悲しを生むことになるのです・・・

 

ペットと一緒に暮らすのであれば、私達、人間は親であり保護者でなくてはなりません。

そしてどんなに賢くて優秀であっても、ペットは、まだ分別のつかない子供のような存在でしかないのです。

家族同様のペットを被害者にも加害者にもしないということはペットと一緒に暮らすという道を選んだ私達人間に課せられた使命であると同時に真の愛情でもあるのだと私は思っています。

死期を悟ったペットからのシグナル

以前、当ブログ{ペットたちが死の間際にとる行動・・・}でも書かせてもらったことがあるのですが、ペット葬儀の仕事をしていると、病気や老衰などで死期が間近であることを自覚したペット達が飼い主さんに何らかのシグナルを発信していたという話を飼い主さんから聞かせてもらうことがよくあります。

シグナルの方法は様々でありますが、特に犬ちゃんの場合、よく耳にするのが、鳴き声や視線で直接、訴えているように鳴いていた、または見ていた、ということが多く、次いで、いつもしないような行動をとって知らせていたというのも少なくありません。

ペットを亡くした経験がある人ならご理解できると思うのですが「今、思い返せばペットのあの行動は私に(死期が)迫っていることを知らせてくれていたんだな」と思えることがあるのではないでしょうか?

 

寝屋川市のヨークシャーテリアのチャピちゃんも、そんなシグナルを発した犬ちゃんであり、飼い主のYさんも、それに気付きペットとの最期の時間を後悔無く過ごすことのできた一人であります。

チャピちゃんは今から12年前に、当時28歳であったYさんの一人娘さんがペットショップで購入した犬ちゃんでありました。

チャピちゃんは、すぐにYさん一家に溶け込み、家族皆から愛される人懐っこい犬だったそうです。

ところがチャピちゃんがYさんの家に来てから1年後、娘さんが結婚し、四国に嫁いでいってしまったのでありました。

淋しいことではありましたが、チャピちゃんには優しい娘さんのご両親が居たので、落ち込むこともなく、元気に暮らしてそうです。

特にお父さんは、とても優しく、いつも散歩に連れて行ってくれるので、チャピちゃんはお父さんのことが大好きでした。

お父さんが朝、仕事に行くとき、チャピちゃんはお父さんの靴をくわえたまま、「どこにも行かないで」と言わんばかりに部屋の角に隠れるようにしていたそうです。

そんなチャピちゃんの姿を見てお父さんは笑いながら「仕事いかんとお前のご飯も買えなくなるんやで」と諭しながら靴を返してもらって仕事に出かけるのYさん宅の朝の恒例になっていました。

お母さんに抱かれお父さんを見送るときチャピちゃんは、お父さんの言葉を借りると「心を掴まれるくらい悲しい鳴き声」をあげていたそうです。

お母さん曰く「真っ直ぐ帰ってくることのほうが少なかった」お父さんではありますが、チャピちゃんが家に来てからは、仕事が終わったら家に直行して、近くの淀川河川敷をチャピちゃんと一緒に散歩するのが何よりの楽しみになりました。

そして仕事が休みの日には「丸一日帰ってこない」とお母さんが呆れるくらい、お父さんはチャピちゃんを連れていろんなところに遊びに行っていたそうです。

そんな穏やかな生活が10年ほど続いたある日、チャピちゃんは肝臓癌を患い闘病生活を余儀なくされたのでした。

病院にはお母さんが連れて行ってくれたのですが、チャピちゃんの病状は大好きだったお父さんとの散歩も行けなくなるほど日に日に悪化していき、亡くなる2週間前からは、完全に寝たきりの状態になってしまったそうです。

チャピちゃんが寝たきりになってからは、お医者さんからも「長くはないです」と告げられていたこともあり、お父さんは毎朝、出勤前に「行ってくるな。終わったらすぐ帰ってくるから待っといてな」とチャピちゃんの前足に小指をひっつけて指きりをするように声をかけてから出かけていました。

そして、その日の朝もお父さんがいつものようにチャピちゃんに声をかけたときチャピちゃんはゆっくりと首を上げお父さんの顔をじっと見つめたそうです。

ここ数日は話しかけたとき目を開けることあったのですが、首をもたげたことはなく、お父さんは、いつもと違うチャピちゃんの視線に胸騒ぎを覚えました。

そしてチャピちゃんはその後、何日かぶりに起き上がるとフラフラしながら玄関の方に歩いていきました。

驚いたお父さんは台所で弁当をつくっていたお母さんを呼びました。

お母さんが何事かと玄関まで行ってみると、そこには立ち竦んでいるお父さんとその隣ですっかり痩せ細って背骨を浮き出したまま座っているチャピちゃんの後姿がありました。

お母さんは驚いて「チャピが自分で歩いたんですか?」とお父さんに尋ねました。

「そうや、ヨロヨロしながらここまで歩きよった」とお父さんも驚いた様子で答えました。

「久しぶりにお見送りしたかったんかな」と言ったお母さんに「違う。こいつ(チャピちゃんのこと)ワシの靴を見とるんや・・・」とお父さんは言いました。

お父さんのその言葉を聞いてお母さんはお父さんが何を言いたいのかがわかりました。

「こいつ行くなって言うてるんや・・・今日は一緒におってくれ言うてるんや。元気やったら玄関降りて靴をくわえたいんやけど、もうこの段差を降りる元気もない・・・から・・・・こうやって口惜しそうにワシの靴を見てるんや・・・」とお父さんは言葉を詰まらせながら言ったそうです。

お父さんは目に涙を浮かべ、お母さんに「今日は休む。『体調悪いから休む』ってお前から会社に電話しといてくれ」とだけ言い残しチャピちゃんを優しく包むように抱き上げ居間に戻っていきました。

お母さんは言われたままお父さんの会社に電話を入れた後、居間に戻りました。

お母さんと結婚して以来、お父さんが仕事を休んだのも涙を見せたのもこの日が初めてでありました・・・

居間では父さんはチャピちゃんを専用のベッドに寝かせることなく、膝の上に抱いたままその時を過ごし、チャピちゃんもお父さんの膝の上で気持ちよさそうに目を細めていました。

 

そして、その日の11時過ぎ、チャピちゃんはお父さんの膝の上で眠るようにして息を引き取ったそうです・・・

その様子をお父さんはただ静かに見守り「逝きよった・・・」とだけお母さんに告げました。

 

チャピちゃんの火葬を承った私は、ご火葬のときにお母さんから、このお話を聞かせてもらいました。

お父さんはご火葬が始まる前に「だいたい1時間くらいでっか?」と私に火葬の所用時間の確認をして、自転車でどこかにでかけていきました。

「ご主人さんは何か用事で出かけられたんですか?」との私の問いに「泣いてしまうから出かけたんと違いますか。たぶん、河川敷に居ると思います」とお母さんは笑顔でおしえてくれました。

お父さんが出かけたときは、まだお母さんからお話を聞く前だったので、「ペットが亡くなったのにさばさばした人だな」と思ったのですが、話を聞いて今のお父さんの心情を思い、私は胸が熱くなりました。

チャピちゃんの体は過酷な闘病生活により限界まで痩せていたこともあって、火葬は予定よりも早く30分で終わりました。

火葬が終わったことをお母さんに報告すると「お父さん電話もってないから連絡つかへんし、きっと時間(30分後)まで戻ってこないわよ」と申し訳なさそうに仰ったので「構いません。お待ちします」と私はこたえました。

「すいませんね」と詫びるお母さんに私は「お父さんは河川敷にいるんですか?」と尋ねました。

「そうやと思うんですけど・・・」と言ったお母さんに「もしよかったら、僕が呼びに行っていいですか?」と私は聞いてみました。

お母さんは「まあ河川敷いうても広いですから、近くにおるかどうかわかっりゃあしませんよ」と仰ったのですが、私は「構いません。ちょっとだけ、見てきます」と言い残し河川敷の方にむかって歩き出しました。

私はお母さんからお話を聞いて、どうしてもお父さんと二人でお話がしたくなったのです。

河川敷の階段を登り、周りを見渡してすぐ、土手に腰掛けて川を眺めているお父さんの姿が目に入りました。

私はお父さんに静かに歩み寄り「Yさん」と声をかけました。

お父さんは私の登場が予想外であったように、すこし驚いた表情をされ「あれ。もう終わったんですか」と立ち上がろうとされました。

私は慌てて「いえいえ。火葬は無事に終わったんですけど、火葬炉を冷却しないといけないので、まだ10分は構いませんよ」とお父さんの肩を押さえながら言いました。

そして「お邪魔じゃなかったら隣に座っていいですか?」とお父さんに尋ねました。

お父さんは「はあ~かまへんけど・・・どないされたん?」と照れくさそうに言いました。

私はお父さんの隣に腰掛けながら「いえ。先ほど奥さんからチャピちゃんとYさんの靴の話をお聞きしまして、すごく胸に残る話でした。それで、Yさんとお話したくなったんです。お邪魔でしたか?」と聞きました。

お父さんは、少し笑いながら「いやいや。あらためてお話するような話やないですけど、ホンマの話なんですわ・・・あれはワシに看取ってくれという合図やったと思います」と淋しげに話されました。

「でも、実際に、看取ってもらえてチャピちゃんもきっと喜んでいるでしょうね」と言った私に「どうやろか・・・それはチャピに聞かんとわかりませんけど、ワシは・・・あんじょう看取れて良かった思うとります」と目を細めて仰いました。

その後、私とお父さんは土手に座ったまま1時間近くお話をしました。

お父さんがお聞かせくださるチャピちゃんの話は尽きず、私も時間を忘れて話を聞いていましたが、後方から「お父さん」とお母さんが呼ぶ声がして私とお父さんは腰をあげました。

「えらい長いことなにしてはったんですか?」と心配そうに尋ねたお母さんに「チャピの話をしてただけや」とお父さんは笑顔で返事しておられました。

その後、お父さんとお母さんはチャピちゃんのお骨あげを二人でされ、チャピちゃんの遺骨は自宅の居間で保管されることになりました。

 

悲しいことではありますが、どんな命にも限りがあり、別れは必ず訪れます。

お父さんが言ったようにチャピちゃんに聞かないとわからないことではありますが、お父さんに看取られながら逝くことはチャピちゃんが心から望む別れの形であったように私は思ったのです。

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

 



 

大阪 ペット葬儀・火葬に関するお問い合せはプレシャスコーポレーションまで

大阪本社 大阪府守口市菊水通3丁目7-9

ペット葬儀・火葬のご依頼はフリーダイヤル:0120-982-660

夢の実現

この度、弊社プレシャスコーポレーションの長年の夢であったペット専用火葬炉「OKURU」の第1号機が完成しました。

市販の火葬炉は元々、焼却炉を改良したものであり、ペットの火葬を目的に製造された物はほとんど存在していませんでした。

そこで当社ではペット専用の火葬炉を造るため、企画段階から設計に参加し、私やスタッフの意見等、現場の声を反映させながら製造会社と共同で完成に至りました。

正直、完成するまでの道は平坦なものではありませんでした。

我々、現場スタッフと製造技術者との間でコスト、安全性、技術的な問題等、幾度となく意見が割れ、その都度、設計を1から練り直し、試作機のテストを何度も繰り返しながら、改良に改良を重ね完成まで漕ぎ着けることができました。

設計会社及び製造会社の皆様には心から感謝しています。

ペット専門火葬炉を自社で製造することは私の夢でありましたが、これでまた一つ夢が実現しました。

私の掲げる細かな目標や夢は数え切れないほどありますが、大きな夢はこれで残すところ、あと一つになりました。

最後の夢は私とプレシャスコーポレーションの最終目標でもあり、今はまだ公開はしませんが、5年以内を目処に達成するつもりであります。

開業当初、スタッフを前にそのプレシャスの最終目標を示したとき、「夢のような話ですね」という声があがりました。

しかし、今ではそのようなことを口にする人間はいません。

それは皆が達成できると確信できるほど、目標に近づいてきたと実感しているからにほかなりません。

そして、その最終目標を達成するためには、この「OKURU]の完成は絶対条件でもありました。

スタッフをはじめ、業務提携を結んでくださってる関連施設の皆様。そして、いつもプレシャスコーポレーションにご依頼を下さる同志と呼べる方々。

それら同じ価値観を共有できる人々に支えられて、必ず近いうちに実現できると私は確信しています。

淋しさを断ち切るための模様替え



 

16歳で永眠した大阪市のHさんの愛猫のチュラちゃんは生前、日向ぼっこが大好きだったそうです。

チュラちゃんは朝日が差し込む窓辺が大のお気に入りで冬場の午前中はいつもそこに座っていました。

朝、目覚めたら窓越しのカーテンの向こうに座って日向ぼっこをしているチュラちゃんのシルエットがいつもそこにあり、「おはよう」と声をかけてHさんの一日は始まるのでした。

そしてチュラちゃんはHさんの挨拶に尻尾をユラユラさせてこたえていたそうです・・・

 

「ずっと一緒に居れると思ってたし、いなくなることなんて考えもしなかった・・・」

チュラちゃんのお葬儀のとき、祭壇の前でHさんは私にそう言いました。

チュラちゃんのお葬儀はチュラちゃんが息を引き取ってから一週間後に執り行われたのですが、Hさんは、どうしてもチュラちゃんの死を受け止めることが出来ず、チュラちゃんが亡くなってからも生前と同じように話しかけ、ご飯も用意してから仕事に出かけていたそうです。

「当り前だけど、ご飯も水も全然減っていなくって・・・わかっているんだけど、認めたくなかったんです・・・」

Hさんは大粒の涙を流しながら私に訴えかけるように言いました。

「同じようにペットを亡くした人は皆、夜が辛いって言ってたんですけど、私は朝が一番寂しかった・・・目が覚めたら窓辺にチュラの影があって『チュラが死んだのは夢だったんだ』って思いたかったんだけど、やっぱり影はなくって・・・その時に『チュラはもういないんだ』って思い知らされるんです・・・」



私が差し出したハンカチで涙を拭いながらHさんは苦しい胸の内を話してくれました。

そしてHさんは続けるように「本当はチュラが亡くなって綺麗なうちに見送ってあげたかったんですけど、私が離れられなかったんです」と申し訳なさそうに仰いました。

事実、Hさんは当初、チュラちゃんが亡くなった翌日にお葬儀とご火葬のご依頼をされていたのですが、当日の朝に「すいませんがキャンセルお願いできますか」と当社にお電話でお断りをいれられたのでした。

私はてっきり別の葬儀会社に変更されたのだと思い、快くキャンセルを承諾したのですが、その4日後、再びHさんからのご依頼があり、この日のご訪問に至ったのでありました。

「結局、私のわがままでチュラやプレシャスさんまで振り回してしまって・・・ごめんなさい」とHさんは小さな声で言いながらペコンと頭を下げました。

「気にしないで下さい。Hさんと同じように直前に延期される人は少なくないんですよ。それに心からお見送りできる環境が揃わないと、セレモニーをする意味がありません。ですから、そういうことも含めて我々のお仕事だと思っています」と私は言いました。

Hさんは頭を下げた姿勢のまま「ありがとうございます」と涙声で言ってくださいました。

 

その後、私とHさんは近くの公園に移動し、チュラちゃんのご火葬をHさん立会いのもと執り行ったのですが、ご火葬の間もHさんは火葬車から離れることはなく、ただひたすら涙を流しておられました。

ご火葬が無事に終わり、お骨あげはHさんの希望で自宅で執り行われることになったので、もう一度、私とHさんは自宅に戻り、火葬炉からトレイを外しチュラちゃんのお骨を部屋に運びました。

お骨あげのとき、Hさんは骨上げ箸を使わず大切そうに指で拾骨され、細かく割れてしまったお骨も刷毛で集め、チュラちゃんの遺骨は細部に渡って余すことなく骨壷に納められたのでした。

お骨壷を自宅で保管されることを希望されたHさんは、保管場所にと決められていたチュラちゃんのお気に入りの場所であった窓辺に骨壷を置こうとしたとき、不意に骨壷を持った手を止められ、その場に立ち竦まれました。

そして、後にいた私の方を振り返り「ここに置いたら毎朝、目覚めたら骨壷のシルエットを見ることになるんですね・・・」と寂しげな顔をして仰りました。

Hさんの言わんとすることが分かった私は「そうですね・・・どこか他の場所にされますか?」と尋ねるように言いました。

Hさんは両手に抱いた骨壷に視線を落としながら「ううん。チュラはここ(窓辺)が1番好きな場所だったからここに置きます。ただ私がまたグダグダなりそうで・・・」と小さな声で呟くように言いました。

少し沈黙の後、Hさんは奮い立ったように顔を上げ「やっぱりここしかない」と言って骨壷を窓辺に優しく置かれました。

「大丈夫ですか?」と尋ねた私にHさんは「はい。でも、毎朝悲しくなって起きるのも嫌だからベッドを移動させます。近いうちに弟にでも頼んで動かしてもらいます」と仰られました。

「なんなら僕が動かしましょうか?」と私が言ったところHさんは「いいですいいですそんなの」と右手を左右に振りながら「そこまでしてもらったら悪いですし」と恐縮されました。

私も言ってはみたものの、一人暮らしの女性のベッドをいちペット葬儀業者が触れるのは、さすがに失礼にあたることだなと自分の軽はずみな言動を反省し「そうですよね。では私はこれで」と頭を下げ、Hさん宅を出ました。

車に乗り込みエンジンのキーを回したとき助手席側の窓をノックする音がしたので見てみるとHさんが両手を顔の前に合掌するように合わせながら立っておられたので、私は窓を降ろして「どうしたんですか?」と尋ねました。

するとろHさんは「すいません野村さん・・・やっぱりベッド動かしてもらうの手伝ってもらっていいですか?」と申し訳なさそうに仰いました。

私は「ああ。はい。いいですよ」とエンジンを切って、もう一度、Hさんの部屋に戻りました。

「どこに移動されますか?」と聞いた私にHさんはベッドが置いてある反対側の壁の方を指差し「あっちに置きたいので、そっち持ってもらっていいですか?」と言いながらベッドの足側の縁を持ち上げました。

私は言われた通り頭側の縁を持ってHさんと二人でベッドを反対側の壁まで運びました。

Hさんはベッドを移動したことで部屋のレイアウトのバランスが崩れたことが気になったみたいで「野村さん本当に申し訳ないんですけど、タンスも移動させたいんで、手伝ってくれますか?」と少し照れ笑いを浮べながら仰りました。

私は「はい。TVやソファーも希望の場所に移動させますんで、私がいるうちに模様替えを済ませてしまいましょう」と返事し、その後、Hさんは「ああでもない。こうでもない」と言わんばかりに家具やインテリアの配置を変えておられました。

結局、部屋のイメージはガラリと変わり、汗だくになった私にHさんは「なにからなにまで本当にすいませんでした」と深く頭を下げられたので「セレモニーよりきつかったです^^」と私は冗談っぽく返しました。

模様替えが一段落し、様変わりしたHさんの部屋を眺めて私はある思いが頭をよぎりました。

でも、そのことを伝えるのは今のHさんには酷だということも分かっていたので、私は何も言わずに帰ることにしました。

私を玄関先までお見送りしてくださったHさんがドアの前で「野村さん、さっき何か見えたんですか?」と尋ねられました。

「さっきっとは?」と聞いた私に「ついさっき部屋を出る前に骨壷の方をじっと見てたでしょ?もしかしてチュラの霊?」

「違いますよ。僕はそんな能力ありません。それに見てたんじゃなく考えていただけです」と言った私に「何を考えてたんです?」とHさんは興味深げに聞かれました。

私はそのことを伝えるべきか迷いました。

暫しの沈黙の後「Hさん。今日はチュラちゃんのお葬儀の当日ですし、言わずに帰ろうと思ったのですけど、一つだけいいですか?」と確認するように私は話を切り出しました。

私の切り出し方が含み口調だったせいか、Hさんは不安な表情をされて「なんですか?・・・」と小さな声で返事されました。

「いや・・・私もペットロス経験者ですので、Hさんの気持ちはご理解できます・・・今はチュラちゃんを喪ったばかりなので、しばらくの間は悲しみにくれるのはしかたないことだと思います。でも悲しみから目を背けてるうちは何も変わらないし解決しないこともあるんですよ・・・だからすぐにとは言いません。少しずつでいいので、現実と向き合ってHさんらしさを取り戻してもらいたいと思ったんです」と告げました。

私が話してる間、Hさんは私の目を見ながら真剣に聞いていらっしゃいました。

そして、目をつむり、両手で自分の頬を包むようにしながら「ありがとうございます。チュラが逝ってから過ごした数日間で私もそのことを学びました・・・チュラがいない生活に慣れるまで、もう少し時間がかかるかもしれないけど、いつかちゃんと受け止めて・・・」

Hさんはそこまで言って涙を流されました・・・

私は「わかってます。本当に自分のペースでかまわないので少しずつ進んでもらいたいと思っています。僕はHさんがHさんらしさを取り戻すことがチュラちゃんへの餞(はなむけ)になると信じていますので、Hさんがいつまでも悲しんでいたならチュラちゃんも気になって旅立てないかもしれませんよね。だから言いたかったんです」と本心を伝えました。

Hさんは手で涙をふき「はい。自分でもこんな自分にはいい加減ウンザリしてるんで、しっかりしなきゃって思ってます。」と力強く仰いました。

そして「その時はベッドも元の位置に戻します。やっぱりベッドは窓のそばがいいんで。そのときは野村さん、また来て手伝ってくださいね」と最後は冗談っぽく言われたので私は思わず笑ってしまい「わかりました」と答えました。

つられるように笑ったHさんの曇りの無い表情を見届け、私はHさん宅を後にしました。

そしてHさんは私の車が見えなくなるまで、ずっと頭を下げて見送ってくださいました。

 

お一人暮らしの飼い主さんがペットを喪ったことが原因で生活のリズムを崩され、ペットロスに陥ることは少なくはありません。

そこから抜け出す第一歩は、残酷な表現ではありますが「ペットの死」を受け入れることからしか始まらないらないのも事実であります。

とても辛いことではありますが、亡くなったペットちゃんに代わってそのことを飼い主さんにお伝えすることも、『ペットちゃんから託された私達の使命』であると私は思っているので、特にHさんのようなお一人暮らしの飼い主さんには、何らかの方法でそのことをお伝えするように心掛けております。

 

でも、一度、キャンセルをした後、再度、チュラちゃんのお葬儀のご依頼を決められたときからHさんの第一歩はすでに始まっていたのかもしれません。

私は帰り際のHさんの表情を思い出しながら

「ベッドを元の位置に戻す日は、そんなに遠くないかもしれない」

強くそう感じました。

Home > アーカイブ > 2012-12

  • 亡くなったペットの遺骨で作るメモリアルグッズ
  • 永代供養
  • ペット火葬について日々のスタッフブログ
  • ペットロス 愛するペットの死を乗り越えるために
  • 訪問可能エリア 大阪・京都・兵庫・滋賀・和歌山・奈良 その近辺のエリアに関してもお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ