2012-07

突然死したチワワのチロルちゃんに見せたかったもの・・・

その日の朝、大東市のチワワのチロルちゃんは、朝食を食べませんでした。

飼い主のFさんはチロルちゃんを抱き上げ「どうしたの?」と顔を覗きました。

もう一度、朝食の前にチロルちゃんを置き、しばらく様子を見ていたのですが、チロルちゃんは一向に食べようとしませんでした。

心配になったFさんは台所にいたお母さんに「チロルがおかしいの。ちょっと来て」と声をかけました。

お母さんは家族の朝食の準備をしていたのですが、Fさんに呼ばれ、「どうしたの?」と部屋にきてくれました。

部屋に入ってきたお母さんのもとに駆け寄ろうとしたのか、チロルちゃんはスクっと立ち上がりお母さんを見上げました。

次の瞬間、チロルちゃんは自分の尻尾を追いかけるような感じでクルクルと二回ほど周った後、バランスを崩し頭から床に転げたのでした。

その光景を見て驚いたFさんは慌ててチロルちゃんを抱き上げたのですが、チロルちゃんは目を見開いたまま痙攣し、口からは泡が噴き出てきたのです。

「すぐ病院つれていきなさい!」と叫ぶようにお母さんが言い、Fさんは弟さんが運転する車で病院に向かいました。

病院に向かう車の中でチロルちゃんの痙攣は治まったのですが、同時に呼吸もとまり、「チロル!チロル!」と揺すりながら呼びかけるFさんの声にも反応することはなく、意識がもどることはありませんでした。

病院に着いたときには心肺停止の状態で、あらゆる処置をほどこしたのですが、チロルちゃんは、そのまま帰らぬ犬となったのです・・・

享年六歳でありました・・・

 

呼吸をすることをやめたチロルちゃんを抱き、Fさんは家に戻りました。

車のエンジン音を聞きつけたお母さんが玄関から「どうやったの?」と飛びだしてきましたが、うつむく子供達の顔と、娘に抱かれたまま動かないチロルちゃんの姿が最悪の結果を物語っており、そのまま言葉を失いました。

病院で説明をうけたときから、悪い夢を見ているようで、状況を把握しきれないまま帰宅したFさんは、涙を浮かべて自分を見つめるお母さんの顔を見て、これは夢ではなく現実のことだと認識し、その場で泣き崩れ、弟さんに支えられるようにして家に入りました・・・

 

弊社プレシャスコーポレーションに「自宅でちゃんと線香をあげてやって、火葬もお願いしたいのですが」とお葬儀とご火葬のご依頼の電話をくださったのは弟さんでした。

そしてセレモニーは弟さんが仕事から戻られる夜の8時から執り行われることになりました。

予定の時刻にFさん宅に到着した私を玄関で迎えてくださったのはお母さんと弟さんでした。

私はお二人に挨拶をし、お悔みを告げた後、「もしよろしければ、祭壇をつくらせてもらう前に亡くなられたペットちゃんに手をあわさせていただきたいのですが?」と申し出たところ、お二人はドアが閉ざされた奥の部屋の方を振り返り「ちょっと待ってください」と困惑されたような感じで仰りました。

お母さんが部屋のほうに歩いていかれ、ドアをノックし部屋に入っていかれました。

その時、弟さんが「チロルは姉の犬なんですよ」と静かな口調で私に教えてくれました。

私は「そうなんですか・・・お姉さんはかなり落ち込んでおられるのですか?」と尋ねたところ、弟さんは「はい・・・かなり・・・仕事も休みましたしね・・・亡くなってからずっと部屋に篭ったままなんです」と心配そうな顔をして仰いました。

「では、先に祭壇の準備に取り掛かったほうがよろしいでしょうか?」と聞いた私に「そっちのほうがいいですね。できるだけ一緒に居させてあげたいんで」と弟さんは寂しげな笑顔を浮かべ言いました。

お母さんが部屋から出てこられ「もう少しだけ待っていただけますか?」と私に告げられたので、「今、息子さんから事情を聞きました。先にセレモニーの準備をさせていただきます」と言った私に「すいません」とお母さんは頭を下げられました。

リビングに祭壇を設置し、ろうそくと線香に火をつけ、お母さんと弟さんと一緒にFさんとチロルちゃんが部屋から出てくるのを待ってる間、私は、今朝方に家族を襲った悲しい出来事の詳細をお二人から聞かされました。

「いきなりだったもんで・・・娘のショックが大きくて・・・」と涙ながらにお母さんが仰ったので、私は「今日はチロルちゃんのセレモニーが最後なんで、お時間はあります。ですので、娘さんの気持ちが落ち着かれるまでお待ちしましょう」と言いました。

お母さんと弟さんは揃って「すいません」と頭を下げられ「いえいえ」と恐縮する私にコーヒーを入れてくれました。

コーヒーを飲みほしたとき、部屋の扉が開き、肩を落としたFさんがチロルちゃんにキスするように俯き加減の姿勢で抱きしめながら出てこられました。

Fさんは「遅くなってすいません」と力ない言葉で私に仰ったので「いえ。とんでもございません。お時間はあります。お別れが充分に御済でないなら私のことは気にせず遠慮なしに仰ってください」と言いました。

Fさんは「ありがとうございます。でも大丈夫です」と涙を流しながら私にチロルちゃんを差し出しました。

チロルちゃんを祭壇に寝かせてあげ、旅装束を施し、しめやかにセレモニーは執り行われました。

お母さん、娘さん、息子さん、私の順でお焼香をあげ、後は出棺し火葬を待つだけの時間になり、私は「ご火葬の準備をしてまいります。何度も申したように、お時間はとってもらっても構いませんので、チロルちゃんと最後のお別れをしてあげてください。私は表で待機させてもらいますので、出棺の準備が出来ましたら声をかけてください」とご家族に伝え、自宅前にとめた火葬車に向かい火葬の準備に取り掛かりました。

おそらく、最後のお別れにお時間がかかるだろうと思った私は会社に電話をかけ、その旨を報告しようとしたとき、玄関の扉が開き、弟さんが「あの。なるべく早く天国にいかせてあげたいので、出棺おねがいできますか」と声をかけてくれました。

その後、すぐチロルちゃんはFさんに抱かれて出棺し、優しく火葬炉に納められました。

私は「生花や乾燥したフード類なら一緒に火葬できますけど、どうされますか?」とFさんに尋ねたところ、Fさんは「そうなんですか?じゃあジャーキーとってきます」と言って、お母さんと一緒に家に戻られました。

弟さんと二人になった私は火葬車の前でチロルちゃんの想い出話を聞かせてもらってたのですが、Fさんとお母さんが家に戻られて10分ほど過ぎたとき、弟さんが「にしても遅いな・・・なにしてんだろ?」と玄関の方に顔を向けました。

私は「少し様子を見てきます。チロルちゃんについててあげてください」と弟さんにお願いをし、開けたままの玄関のドアからリビングを覗きました。

リビングのソファーには雑誌を抱きしめながら泣いているFさんと、そのFさんの肩を抱くようにして座っているお母さんの姿がありました。

私は「どうかされましたか?」と声を殺すようにしてお母さんに尋ねたところ、お母さんは「実はこの子(Fさん)夏休みにチロルを連れて友達と白浜に旅行に行く予定だったんですよ。で、昨日、ペット同伴OKのホテルの予約をとったばかりだったんです。それを思い出しちゃって・・・」とやりきれないような顔で仰いました。

Fさんの手には旅行雑誌が握られており、雑誌の表紙はFさんの大粒の涙で濡れていました。

察するところ、Fさんは一緒に火葬するジャーキーをとろうとしたとき、横にあった雑誌を見て、そのことを思い出し、おさまった悲しみが、再び込み上げてきたようでありました。

そんなFさんにかける言葉もなく、私も立ちすくんでいましたが、待ちきれなくなった弟さんが「どうかしたん?」と玄関を覗かれたので、私は弟さんに事情を説明し、弟さんは納得されたように頷いたあと「じゃあ僕等は外で待ってるから」とお母さんに告げ、私と二人、玄関を出て、再び火葬車の前まで戻りました。

10分後、Fさんはお母さんに付き添われるようにして出てこられ「これお願いします」と私にジャーキーを渡しました。

私は火葬炉のチロルちゃんの口元にジャーキーを置いてあげ、「よろしいでしょうか?」とFさんに確認し火葬炉の扉を閉めました。

火葬炉の扉が閉まったとき、Fさんは声をあげて泣かれておりました。

そして火葬が始まり、Fさんは弟さんとお母さんに両脇を支えられるようにして自宅に戻られたのでした・・・

一人、火葬車に残った私は、やりきれない気持ちのまま火葬車の煙突に合掌しました。

 

火葬を開始して20分ほどしたとき玄関のドアが開きFさんが「どうぞ」と言って冷たいお茶をもってきてくれました。

幾分か落ち着きを取り戻されたFさんは駐車場にあった折りたたみの椅子に腰掛けながら「いろいろご面倒かけてすいません」と労いの言葉をかけてくださいました。

Fさんは続けるように「山とか川にはバーベキューに連れていったことはあるのですが、海だけは見たことがなかったんですよ。チロルは」と独り言のように呟きました。

無言で頷く私にFさんは「それで夏に犬を飼ってる友達と一緒にペット連れて海に旅行に行こうと計画したんです。海を見せてあげたかった・・・チロルに」と寂しそうに仰りました。

聞きづらいことではあったのですが、私は「旅行は中止されるんですか?」と尋ねました。

Fさんは「そのほうがいいかなって思って、さっき友達に電話したんです。そしたら、私が嫌でないなら行こうって言ってくれて・・・。友達も気を使ってくれて、自分もペットを連れていかないから二人だけで行こうって言ってくれました」と終始、俯き加減で言いました。

「そうですか・・・こんなときに私が言うことではないんですが、せっかく計画したんだし行ったほうがいいと思いますよ」と私が言うと「お母さんも同じこと言ってました」とFさんは少しだけ笑みを浮かべ仰いました。

そのとき自宅前で自転車の急ブレーキの音がしました。見ると玄関先に若い女性が涙を浮かべてたっておられ、その女性を見て驚いたFさんは「来てくれたの?」と声をかけました。

その方はFさんに歩み寄り何かを言おうとしましたが涙で言葉になりませんでした。

その女性はFさんと旅行の計画をたてた友人の方でした。

その後、Fさんは友人さんと二人で自宅に入られました。

そしてご火葬が無事に終わり、Fさんとお母さんと弟さんと一緒に友人の方もお骨あげをされ、チロルちゃんのお骨は骨壷に納められました。

帰り際、Fさんが「やっぱり旅行に行くことにしました。ホテルは変えますけどチロルの写真はもっていきます。海を見せてあげるんです」と仰ってました。

私は心持ち元気になられたFさんを見て、少しだけ安心しました。

同じようにそんなFさんの姿を見守るお母さんと弟さん視線はとても優しげで温かなものでありました。

ペットを喪った人たちとの再会

プレシャス会館でペットの遺骨でつくるメモリアルグッズ※{遺骨をガラス石材に融合させて自分自身で作るメモリアルアクセサリー参照}の製造を始めてから、以前、弊社でペットの葬儀・火葬をご依頼された方達と、再会する機会が増えました。

今までは、春に行なわれる慰霊祭の時くらいしか、お会いする機会がなかったので、ペットを喪ってからの、その後のことが気掛かりになっていた飼い主さんとの再会はいろいろな意味で有意義であり、貴重な時間を過ごせるようになりました。

メモリアルグッズの製造は別のスタッフが担当するので、私が一緒に作ることはありませんが、私がセレモニーを担当した飼い主さんがグッズ製造のために来館されるときは、なるべく会館のほうに出向き、同席するようにしております。

その席で、喪ってからの日々のことや、いかににペットの死と向き合い、自分なりに前向きに生活されているかなどのお話を聞かせてもらっています。

ペットを喪った直後に執り行われるセレモニーの席では、悲しみに打ちひしがれているお姿に、声をかけることも躊躇うばかりで、まともな会話を何一つ交わせないまま、セレモニー会場である飼い主様宅を後にするということも少なくありません。

そんな方々と、再びお会いしたとき、お元気を取り戻されたお姿を見て、私は自然と笑顔になってしまいますが、逆に私の顔を見て、セレモニーの日の記憶が甦り、思わず涙ぐむ人もいます。

でも、すぐに、平静さをとりもどして、明るい表情に戻り、旅立ったペットへの想いをかみしめながら自分自身の手でメモリアルグッズの製作に取り掛かられ、それを手に会館を出られるころは皆様は晴れ晴れとした笑顔になっておられます。

私はこの仕事をして本当に良かったと思っています。

なぜなら、何の面識も交友もない人達と、短期間でここまで心が通う仕事など、他にはないし、それは私だけではなく、弊社プレシャスコーポレーション全スタッフも同じ気持ちだと思っております。



 

Home > アーカイブ > 2012-07

  • 亡くなったペットの遺骨で作るメモリアルグッズ
  • 永代供養
  • ペット火葬について日々のスタッフブログ
  • ペットロス 愛するペットの死を乗り越えるために
  • 訪問可能エリア 大阪・京都・兵庫・滋賀・和歌山・奈良 その近辺のエリアに関してもお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ