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淋しさを断ち切るための模様替え



 

16歳で永眠した大阪市のHさんの愛猫のチュラちゃんは生前、日向ぼっこが大好きだったそうです。

チュラちゃんは朝日が差し込む窓辺が大のお気に入りで冬場の午前中はいつもそこに座っていました。

朝、目覚めたら窓越しのカーテンの向こうに座って日向ぼっこをしているチュラちゃんのシルエットがいつもそこにあり、「おはよう」と声をかけてHさんの一日は始まるのでした。

そしてチュラちゃんはHさんの挨拶に尻尾をユラユラさせてこたえていたそうです・・・

 

「ずっと一緒に居れると思ってたし、いなくなることなんて考えもしなかった・・・」

チュラちゃんのお葬儀のとき、祭壇の前でHさんは私にそう言いました。

チュラちゃんのお葬儀はチュラちゃんが息を引き取ってから一週間後に執り行われたのですが、Hさんは、どうしてもチュラちゃんの死を受け止めることが出来ず、チュラちゃんが亡くなってからも生前と同じように話しかけ、ご飯も用意してから仕事に出かけていたそうです。

「当り前だけど、ご飯も水も全然減っていなくって・・・わかっているんだけど、認めたくなかったんです・・・」

Hさんは大粒の涙を流しながら私に訴えかけるように言いました。

「同じようにペットを亡くした人は皆、夜が辛いって言ってたんですけど、私は朝が一番寂しかった・・・目が覚めたら窓辺にチュラの影があって『チュラが死んだのは夢だったんだ』って思いたかったんだけど、やっぱり影はなくって・・・その時に『チュラはもういないんだ』って思い知らされるんです・・・」



私が差し出したハンカチで涙を拭いながらHさんは苦しい胸の内を話してくれました。

そしてHさんは続けるように「本当はチュラが亡くなって綺麗なうちに見送ってあげたかったんですけど、私が離れられなかったんです」と申し訳なさそうに仰いました。

事実、Hさんは当初、チュラちゃんが亡くなった翌日にお葬儀とご火葬のご依頼をされていたのですが、当日の朝に「すいませんがキャンセルお願いできますか」と当社にお電話でお断りをいれられたのでした。

私はてっきり別の葬儀会社に変更されたのだと思い、快くキャンセルを承諾したのですが、その4日後、再びHさんからのご依頼があり、この日のご訪問に至ったのでありました。

「結局、私のわがままでチュラやプレシャスさんまで振り回してしまって・・・ごめんなさい」とHさんは小さな声で言いながらペコンと頭を下げました。

「気にしないで下さい。Hさんと同じように直前に延期される人は少なくないんですよ。それに心からお見送りできる環境が揃わないと、セレモニーをする意味がありません。ですから、そういうことも含めて我々のお仕事だと思っています」と私は言いました。

Hさんは頭を下げた姿勢のまま「ありがとうございます」と涙声で言ってくださいました。

 

その後、私とHさんは近くの公園に移動し、チュラちゃんのご火葬をHさん立会いのもと執り行ったのですが、ご火葬の間もHさんは火葬車から離れることはなく、ただひたすら涙を流しておられました。

ご火葬が無事に終わり、お骨あげはHさんの希望で自宅で執り行われることになったので、もう一度、私とHさんは自宅に戻り、火葬炉からトレイを外しチュラちゃんのお骨を部屋に運びました。

お骨あげのとき、Hさんは骨上げ箸を使わず大切そうに指で拾骨され、細かく割れてしまったお骨も刷毛で集め、チュラちゃんの遺骨は細部に渡って余すことなく骨壷に納められたのでした。

お骨壷を自宅で保管されることを希望されたHさんは、保管場所にと決められていたチュラちゃんのお気に入りの場所であった窓辺に骨壷を置こうとしたとき、不意に骨壷を持った手を止められ、その場に立ち竦まれました。

そして、後にいた私の方を振り返り「ここに置いたら毎朝、目覚めたら骨壷のシルエットを見ることになるんですね・・・」と寂しげな顔をして仰りました。

Hさんの言わんとすることが分かった私は「そうですね・・・どこか他の場所にされますか?」と尋ねるように言いました。

Hさんは両手に抱いた骨壷に視線を落としながら「ううん。チュラはここ(窓辺)が1番好きな場所だったからここに置きます。ただ私がまたグダグダなりそうで・・・」と小さな声で呟くように言いました。

少し沈黙の後、Hさんは奮い立ったように顔を上げ「やっぱりここしかない」と言って骨壷を窓辺に優しく置かれました。

「大丈夫ですか?」と尋ねた私にHさんは「はい。でも、毎朝悲しくなって起きるのも嫌だからベッドを移動させます。近いうちに弟にでも頼んで動かしてもらいます」と仰られました。

「なんなら僕が動かしましょうか?」と私が言ったところHさんは「いいですいいですそんなの」と右手を左右に振りながら「そこまでしてもらったら悪いですし」と恐縮されました。

私も言ってはみたものの、一人暮らしの女性のベッドをいちペット葬儀業者が触れるのは、さすがに失礼にあたることだなと自分の軽はずみな言動を反省し「そうですよね。では私はこれで」と頭を下げ、Hさん宅を出ました。

車に乗り込みエンジンのキーを回したとき助手席側の窓をノックする音がしたので見てみるとHさんが両手を顔の前に合掌するように合わせながら立っておられたので、私は窓を降ろして「どうしたんですか?」と尋ねました。

するとろHさんは「すいません野村さん・・・やっぱりベッド動かしてもらうの手伝ってもらっていいですか?」と申し訳なさそうに仰いました。

私は「ああ。はい。いいですよ」とエンジンを切って、もう一度、Hさんの部屋に戻りました。

「どこに移動されますか?」と聞いた私にHさんはベッドが置いてある反対側の壁の方を指差し「あっちに置きたいので、そっち持ってもらっていいですか?」と言いながらベッドの足側の縁を持ち上げました。

私は言われた通り頭側の縁を持ってHさんと二人でベッドを反対側の壁まで運びました。

Hさんはベッドを移動したことで部屋のレイアウトのバランスが崩れたことが気になったみたいで「野村さん本当に申し訳ないんですけど、タンスも移動させたいんで、手伝ってくれますか?」と少し照れ笑いを浮べながら仰りました。

私は「はい。TVやソファーも希望の場所に移動させますんで、私がいるうちに模様替えを済ませてしまいましょう」と返事し、その後、Hさんは「ああでもない。こうでもない」と言わんばかりに家具やインテリアの配置を変えておられました。

結局、部屋のイメージはガラリと変わり、汗だくになった私にHさんは「なにからなにまで本当にすいませんでした」と深く頭を下げられたので「セレモニーよりきつかったです^^」と私は冗談っぽく返しました。

模様替えが一段落し、様変わりしたHさんの部屋を眺めて私はある思いが頭をよぎりました。

でも、そのことを伝えるのは今のHさんには酷だということも分かっていたので、私は何も言わずに帰ることにしました。

私を玄関先までお見送りしてくださったHさんがドアの前で「野村さん、さっき何か見えたんですか?」と尋ねられました。

「さっきっとは?」と聞いた私に「ついさっき部屋を出る前に骨壷の方をじっと見てたでしょ?もしかしてチュラの霊?」

「違いますよ。僕はそんな能力ありません。それに見てたんじゃなく考えていただけです」と言った私に「何を考えてたんです?」とHさんは興味深げに聞かれました。

私はそのことを伝えるべきか迷いました。

暫しの沈黙の後「Hさん。今日はチュラちゃんのお葬儀の当日ですし、言わずに帰ろうと思ったのですけど、一つだけいいですか?」と確認するように私は話を切り出しました。

私の切り出し方が含み口調だったせいか、Hさんは不安な表情をされて「なんですか?・・・」と小さな声で返事されました。

「いや・・・私もペットロス経験者ですので、Hさんの気持ちはご理解できます・・・今はチュラちゃんを喪ったばかりなので、しばらくの間は悲しみにくれるのはしかたないことだと思います。でも悲しみから目を背けてるうちは何も変わらないし解決しないこともあるんですよ・・・だからすぐにとは言いません。少しずつでいいので、現実と向き合ってHさんらしさを取り戻してもらいたいと思ったんです」と告げました。

私が話してる間、Hさんは私の目を見ながら真剣に聞いていらっしゃいました。

そして、目をつむり、両手で自分の頬を包むようにしながら「ありがとうございます。チュラが逝ってから過ごした数日間で私もそのことを学びました・・・チュラがいない生活に慣れるまで、もう少し時間がかかるかもしれないけど、いつかちゃんと受け止めて・・・」

Hさんはそこまで言って涙を流されました・・・

私は「わかってます。本当に自分のペースでかまわないので少しずつ進んでもらいたいと思っています。僕はHさんがHさんらしさを取り戻すことがチュラちゃんへの餞(はなむけ)になると信じていますので、Hさんがいつまでも悲しんでいたならチュラちゃんも気になって旅立てないかもしれませんよね。だから言いたかったんです」と本心を伝えました。

Hさんは手で涙をふき「はい。自分でもこんな自分にはいい加減ウンザリしてるんで、しっかりしなきゃって思ってます。」と力強く仰いました。

そして「その時はベッドも元の位置に戻します。やっぱりベッドは窓のそばがいいんで。そのときは野村さん、また来て手伝ってくださいね」と最後は冗談っぽく言われたので私は思わず笑ってしまい「わかりました」と答えました。

つられるように笑ったHさんの曇りの無い表情を見届け、私はHさん宅を後にしました。

そしてHさんは私の車が見えなくなるまで、ずっと頭を下げて見送ってくださいました。

 

お一人暮らしの飼い主さんがペットを喪ったことが原因で生活のリズムを崩され、ペットロスに陥ることは少なくはありません。

そこから抜け出す第一歩は、残酷な表現ではありますが「ペットの死」を受け入れることからしか始まらないらないのも事実であります。

とても辛いことではありますが、亡くなったペットちゃんに代わってそのことを飼い主さんにお伝えすることも、『ペットちゃんから託された私達の使命』であると私は思っているので、特にHさんのようなお一人暮らしの飼い主さんには、何らかの方法でそのことをお伝えするように心掛けております。

 

でも、一度、キャンセルをした後、再度、チュラちゃんのお葬儀のご依頼を決められたときからHさんの第一歩はすでに始まっていたのかもしれません。

私は帰り際のHさんの表情を思い出しながら

「ベッドを元の位置に戻す日は、そんなに遠くないかもしれない」

強くそう感じました。

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