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ひき逃げされた豆シバの銀次くんのボール

我々ペットセレモニー会社がご葬儀やご火葬のご依頼を受けるとき、ペットちゃんがどのような経緯で亡くなったのか確認できないまま、自宅にお伺いするケースが大半であります。

もちろん、お電話でご依頼があった際に、これまでの経緯と現在の状態を丁寧に説明してくださる飼い主さんもいらっしゃいますが、ほとんどの場合、ショックと悲しみのあまり、ご希望の葬儀と火葬の日時を伝えるのが精一杯という方も少なくありません・・・

 

朝から季節外れの突風に関西地方が見舞われたその日、豆シバの銀次くんの飼い主さんのSさんから「うちの犬が亡くなりました・・・今日の夕方に来ていただけますか?」と力ない声でご依頼があり、その日の夕刻、私はSさん宅に向かいました。

自宅に到着し、出迎えてくださったSさんに挨拶を済ませ、お悔みを告げた後、リビングに通された私は、ソファーの上で全身を白い布に包まれた状態で安置されてる銀次くんと対面しました。

頭からスッポリ布に覆われた銀次くんのすぐ横に、お気に入りだったのか、ピンク色のビニール製のカラーボールが置かれていました。

白い布はところどころ、朱色のシミが浮きでており、おそらく銀次くんの血液と体液の混ざった痕跡だと私は認識しました。

 

銀次くんの正面に正座をし、手をあわせた後、私は正座したまま背後に居らした、SさんとSさんのお母さんの方に向き直り「あの・・・お聞きしにくいことなんですけど、銀次くんは事故に遭われたのですか?」と尋ねました。

Sさんは涙を流しながら口をおさえ、言葉を発することもできないまま、深く頭を下げ頷きました。

Sさんの隣に居たお母さんが、表を指差し、「家で出て一本目の通りでトラックにひき逃げされたんです・・・すぐ病院連れていったんですけど、手遅れでした・・・」と気丈に説明してくださいました。

Sさんは涙を手で拭いながら話を聞いておられましたが、「ティッシュとってくる」とお母さんに言い残し洗面台のほうにいかれました。

お母さんと二人になった私は「あのお母さん。銀次くんはトラックにひかれただけですか?それともタイヤに巻き込まれたり、引きずられたりしたのですか?」

「いや、私も娘も家に居て見てないんですけど、見た近所の人の話だと、ひかれただけです・・・なんでそんなこと聞きはるの?」とお母さんは困惑ぎみに言いました。

「すいません変な質問して。つまり私が聞きたいのは銀次くんは布で覆わなきゃいけないほど、ひどい状態なのかなと思いまして」

お母さんは、「ああ」と納得された顔をして「私たちは平気ですけど、葬式屋さん(私のこと)が見たくないやろうと思いまして。ずっと、病院から帰ったままそこに寝かせてたんですけど、あなたが来るちょっと前に娘がシーツかぶせたんです」と仰いました。

「私は平気です。傷が残ってるいるのは、どの部分ですか?」という私の問いかけに「顔は綺麗ですよ。胴体というか、一番ひどいのは下腹部の辺りです」とお母さんは私と銀次くんの方に顔を近づけるような感じで言いました。

「このままなら少し可哀想なので、せめて顔だけでも出してあげませんか?それからお焼香あげましょう」と私は提案しました。

お母さんは快く承諾したように「そのほうが私たちも嬉しいし、銀ちゃんも喜ぶと思います」と言って「ハサミいりますか?」と私に尋ねました。

「シーツに傷がつきますけどいいんですか?」と私が尋ねたときはお母さんは立ち上がって机の引き出しからハサミを出して「いいです。一緒に火葬してもらうつもりだったんで。はいこれ。どうぞ使ってください」と言って私にハサミを手渡しました。

Sさんがかけたシーツに無断でハサミを入れることに、少し気が引けましたが、洗面台から戻ってこられる気配がないので、お母さんに再度、確認してからシーツをハサミで切りました。

そして切った穴から銀次くんの顔を出してあげました。

初めて見た銀次くんの顔は事故で亡くなったと思えないくらい安らかで綺麗な顔でありました。

私はハサミを置き、銀次くんの頭を撫でました。後ろでお母さんが「綺麗な顔でしょ」と我が子の自慢をするように優しく微笑んでいらっしゃいました。

その後、私はお母さんと相談して合計6箇所、シーツに穴を開け、頭、両前足、両後ろ足、そして尻尾を出してあげました。

傷口のある胴体部分は白いシーツに包まれたままで、銀次くんは本当に白装束を纏っているような出で立ちになりました。

そして、シーツの上から当社の金のラメ糸で飾られたシルク地の装束を銀次くんに着せてあげて祭壇に寝かせてあげたとき、背後から「なにしてるの?」とSさんの声がしました。

お母さんが振り返り「葬式屋さんが、顔を出してあげようって、してくれはってん」とSさんに説明し、Sさんは祭壇に歩み寄っ装束を施した銀次くんに視線を向けました。

無言で銀次くんを見つめるSさんの横顔を見ながら、私は無断でこのようなことをしたのは、無礼だったのかもと、気をもみました。

しかし、Sさんは「ありがとうございます」と言って大粒の涙を流しました。

Sさんは顔を手で覆い「せっかく泣きやんで顔を洗ってきたのに・・・」と言って涙をふきながら笑顔を見せてくれました。

その後、Sさんとお母さんと私とで、お焼香をあげ、自宅前にとめさせていただいた火葬車で銀次くんは天に召されました。

火葬のとき、Sさんは銀次くんが安置されてたとき、置いてあったボールを手に銀次くんの思い出話をしてくださいました。

「硬派で男らしい犬になってほしくって『銀次』ってつけたんですけど、全く真逆な性格で、すごく臆病で怖がりな犬だったんですよ。ほんとうに・・・。散歩のときも小型犬に出くわしただけで、私の後ろに隠れるくらいビビリ(怖がり)で・・・」と懐かしむように仰いました。

Sさんは続けるように手にしたボールを見ながら「このボールが大好きで、いっつも遊んでました。ご飯のときと寝てるとき以外はいつも銜えてたって言っていいくらい、ずっと銜えてたんですよ・・・口からボールが外れて転がっていくと、慌てて取りに言ってまた銜えるんです。で、またボールがこぼれると、取りに行く。その繰り返しでした」そこまで言って黙り込まれました。

私は黙ったままSさんの言葉に頷きながら次の言葉を待ちました。そしてSさんが「銀は普段。部屋じゃなく、玄関で飼ってたんです。さっきも言ったように臆病だったんで、勝手に門から出ることはなかったんですけど、今日、初めて無断で外に出て・・・事故に遭ったんですよ・・・」と事故に遭った経緯を話してくれました。

私は「そうだったんですか・・・でもなぜ、銀次くんは、今日に限って外に出たんですかね?」とSさんに聞きました。

Sさんは手の甲で口を押さえながら「私もお母さんも、最初、なんで外に出たのかわからなかったんです。病院から戻ったきて、事故現場に行ったとき、道路の向こう側の溝に、このボールが転がっていたんです・・・きっとボールが弾みで外に出て、風で道路まで転がったんだと思います・・・」と涙を堪え話してくれました。

「つまり銀次くんはボールを取りに行ってトラックに・・・・」私はそこまで言って言葉を切りました・・・

40分後、銀次くんの火葬は無事に終わり、Sさんとお母さんの手によってお骨上げされました。

銀次くんのお骨が納められた骨壷を抱きながらSさんは「私の不注意でした・・・門から出ないって安心しきってましたから・・・」と力なく仰ったので、私は「何年もの間、門から出なかったんですから、誰だって出ないって思い込みますよ。事故でペットを喪った飼い主さんは皆、落ち度を探して自分を責めます。でも、それは結果論に過ぎないわけで、誰もがそうしようと思ってしたわけじゃないじゃないですか」と私は言いました。

黙ったまま、遠く見つめたままSさんは聞いていました。

「私も同じ経験があります。しかも私の愛犬は私の目の前でトラックにはねられました」私のその言葉にSさんは顔を私に向けました。

「私もリードを離した自分を責めました・・・でも、責めたところで何も変わりませんでした。だから、言えるんです。自分を責めても何も変わりません。自分を責めて塞ぎこむくらいなら、元気だった頃の思い出を胸にSさんらしく生きていくほうが銀次くんも喜ぶと思います」と私は自身の思いをSさんに伝えました。

少し間を置いた後、Sさんは顔を上げ「はい。わかりました。ありがとうございました」と言って深々と私に頭を下げられました。

「いえ。とんでもないです。わかったようなこと言ってすいませんでした」と私も頭を下げました。

 

朝からの強風が嘘だったかのように、Sさん宅を後にする頃、大阪の空は晴れ渡り、綺麗な夕焼けに包まれていました。

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