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最終章 急死した父の気持ちを教えてくれた犬

本格的な引越しはお父さんの初七日がすんでから業者に依頼して済ませたのですが、Nさんはマンションから最低必要な物だけを実家に持ち帰り、その日から実家でタロくんと生活するようにしたのです。

生まれ育った実家の生活に不便は無かったものの、Nさんにとって犬と生活することは初めてのことだったので、最初は戸惑いの連続だったそうです。

 

タロくんは大型犬であったため、食事の量も含め、Nさんにとってはわからないことだらけではありましたが、犬に詳しい友人達からいろんなを知識を学び、飼い主としての役割と自覚に目覚めていったのです。

 

タロくんの朝夕の散歩もNさんの日課になり、生まれてから一番、規則正しい生活を送るようになったと言っておられました。

とくに夕方の思い出の池までの散歩は、Nさんにとっても楽しみになり、毎日のように池の畔まで行き、そこで休憩する時間はお父さんの思い出と浸る時間にもなったのです。

 

Nさんは池の畔に来るたびに、お父さんのことを考えるようになっていました。

 

思い出すと、お父さんからは、実に多くの大切なことを教えてもらっていたのに、今まで深く考えたことはほとんどなかったように感じたNさんは、池の畔でタロくんと腰を並べて座りながら、記憶の糸を紐解くようにして時間を過ごすようになったのです。

 

お父さんからの教えは、「思いやり」や「人を傷つけない」といった人としての基本的なことがほとんどだったのですが、大人になった今、とても大切なことであると思えるものばかりでありました。

 

そういう意味でも夕方のタロくんの散歩はNさんにとっても有意義な時間になったのです。

 

こんな毎日も悪くない。

そう感じていた矢先、その日は突然やってきたのです・・・

 

その日、いつものように朝、散歩に行こうとNさんがタロくんところにいくと、タロくんはいつもと違う姿勢で薄っすらと目を開いたまま眠っていたのです。

異変を感じたNさんは「タロ・・・タロ・・・」と恐る恐る、数回、タロくんの腹部を優しく揺らしました。

しかし、指先から伝わってきたのはいつもの温かな弾力感ではなく、固く冷たい感触だったのです・・・

 

「なんで・・・」とNさんはその場に座り込んでしまい、涙を流したそうです。

 

推定年齢13歳。

大型犬では高齢であり、大往生と言える年齢ではありましたが、何の前触れもなく、タロくんはお父さんの四十九日の翌日にひっそりと息を引きとったのです・・・

 

Nさんは、この現実をどう受け止めていいのか判断できず、犬に詳しい友人に電話でタロくんの急死を伝えました。

そして、その友人さんのご紹介で、翌日、タロくんの葬儀と火葬を弊社プレシャスコーポレーションが担当させてもらうことになり、私はNさんが希望された時間にNさん宅に火葬車で向かったのです。

 

自宅でお葬儀を執り行った後、火葬はNさんの希望で思い出の池が見える通りで執り行われ、私は火葬の間、Nさんからお父さんが亡くなってから今日に至るまでのお話を聞かせてもらったのです。

 

「今考えれば、タロは私にお父さんの教えを、思い出させるために、私と過ごしていたように思えるんです・・・」

Nさんは火葬が終わったとき、そのように言っておられました。

 

私もNさんの話を聞いていて、同じようなことを考えていました。

 

お骨上げが済んだとき、Nさんはその場でセレモニー費用を清算された後、私に「ここで結構です。私、少し池の方にお参りしてから歩いて帰りますんで」と仰られたのです。

Nさんは最初、タロくんの火葬の場所を池の畔で執り行われることを希望されたのですが、そこは公園の敷地内であったため、火葬車を乗り入れることは出来ませんでした。

思案した結果、最終的に池の畔の見える通りで火葬は執り行うことになったのですが、Nさんは、一人で池にお参りをしてから帰ると仰ったのです。

 

そう私に告げ、Nさんはタロくんの遺骨の納められたお骨壺とお花を持って、池の畔の方に歩いていかれました。

 

Nさんが歩いていく後ろ姿を見つめながら、私は、この場から立ち去ることに少し躊躇いを感じました。

時間は夕刻。周りが暗くなる時間でもあり、いくら思い出の場所であっても女性のNさんが一人で居るには物騒な場所だと思ったからです。

しかし、私が躊躇ったのはそのこと以外に、今、Nさんをあの場で一人で居させることへの抵抗感のようなものを感じたのです。

 

私の場所からは池の水面が光って見え、その光で池の畔で佇むNさんの姿が浮かび上がって見えていました。

 

立ち去ることに気が引けた私はその場から暫しの間、Nさんを見守ることにしたのです。

 

時間にして10分程、Nさんは池の畔にしゃがみこみ、合掌をしたままの姿勢でおられました。

 

そのとき、不意に携帯電話が鳴りました。

 

電話に出てみると、Nさんからでありました。

Nさんは「どうされたんですか?まだ帰られないんですか?」と池の畔から携帯電話をかけてこられたのです。

 

私はNさんの自宅に訪問する際、少し道に迷い、連絡先であったNさんの携帯に自分の携帯から電話をかけて、道を訪ねたのですが、そのときの履歴が残っていたようで、Nさんは帰る気配のない火葬車を見て、不思議に思い電話をかけられたようでした。

 

「いや、あのもう暗くなってきましたし、Nさんのお参りが終わるまで待っておこうと思いまして」と私は返答しました。

「そうなんですか・・・」と元気のない声でNさんが言われたので「余計なことをしてすいませんでした・・・気が散りますか?」と私は訊ねたのです。

 

「いえいえ・・・ありがとうございます。でも、いつも来てたたんで大丈夫ですよ」とNさんが仰られたので「確かに・・・でも、いつもならタロくんが居たから」と私はそこまで言って(しまった・・・)と心で舌打ちをしました。

思わず、一番言ってはいけないことを口走ってしまい、私は携帯を耳から離し、池の畔に目をやりました。

池の畔ではNさんは肩を落とし、しゃがんだまま携帯を耳にあて、池を眺めているようでした。

 

私は電話を切り、池の畔に向かいました。

私の足音に振り向いたNさんに「余計なことしてすいませんでした。お邪魔なようでしたら帰りますが、やはりこの時間に一人でここにいらっしゃるのは、少し物騒だと思いましたんで」と私は弁解するように言いました。

 

Nさんは少しだけ笑みを浮かべながら「別に邪魔とかではないんです・・・待ってもらうのが悪いなって感じたんで・・・」と仰いました。

Nさんの笑顔を見て、少しだけホっとした私はNさんから少し距離を開けて同じように池の畔にしゃがみこみました。

 

Nさんは池を見ながら「な~んか、お父さんが亡くなった日より、今日のほうがお父さんがいなくなった寂しさが身に沁みるんです・・・」としみじみ言われました。

私も池を見ながら「わかるような気がします」とだけ答えました。

 

「私が言うのも何なんですが、父は本当に良い人でした・・・真面目で物静かで理想の親でした。今思えばあんな良い人はいなかった。なのに私はそのことが当たり前に感じて何の感謝もせず、大きくなって・・・何のお礼もできないまま父は逝ってしまった・・・今の私には後悔しか残ってないんです」と涙を流されました。

そんなNさんに私は「仰りたいことわかります。でも、人間って皆そうですよ。いなくなって初めてその人の大切さが身に沁みるものなんです。言い方を変えれば傍にいるときは近すぎて見えないものですよ」と言いました。

「でもねNさん」と私は続けるようにNさんに話しかけました。

Nさんも私を向き「はい」と返事をされたので「僕はね、思うんですよ。お父さんと過ごした日々を思い出しながら、Nさんはいろんなことを再認識されてたじゃないですか。記憶の中のお父さんの些細な言葉や行動から、お父さんの愛情を感じることが出来たでしょ?」と私は語りかけるように言い、Nさんは黙ってうなずかれました。

「僕はNさんがそれを感じれる人間に成長できたことが何よりの親孝行だと思うんですよ。だからお父さんは今、天国で『自分の教育は間違ってなかった。娘はとてもいい人間に成長した』ってすごく喜んでると思うんです」と私は伝えたのです。

「それが親孝行と言えるのかな・・・」とNさんは声を詰まらせ言われたので「温泉旅行に連れていってあげたりするのが親孝行だと思われがちですが、そうじゃないんです。もちろん、そういうのも親孝行ではありますが、本当の親孝行というのは、子供が親の教えを理解し、立派な人間に成長することだと僕は思っています」と私は言いました。

「私は父の教えを理解したと言えるのかな?」とNさんが聞かれたので「理解をされていると思います。理解しているからこそ、今、悲しいんですよ。でもね、理解するのは、以外と簡単なんです。大切なのは、理解しながら行動に移すことです。Nさん。人生、まだまだ、先は長いんですよ。だから、これからの人生の中でNさんがお父さんの教えを念頭に置きながら生きていって、自分の幸せを見つけることが本当の親孝行にもなると僕は思います」と私は答えました。

 

暫しの沈黙があり、Nさんは「ありがとうございます・・・頑張ってお父さんのような人間になります」と深く頭を下げて言われました。

 

その後、私とNさんは池の畔から通りに戻り、私は火葬車でNさんを自宅までお送りしました。

 

別れ際、Nさんは「本当にありがとうございました」ともう一度、頭を下げられたので「いえいえ。偉そうなこと言ってすいません。でもね、Nさん。Nさんが言われた『お父さんのような人間になる』って言った言葉。きっとお父さんにとっては、これ以上のない嬉しい言葉だと思います。もし、本当にNさんがそのようになれたのなら、きっとタロくんも喜ぶし、お母さんも喜ばれると思いますよ」と私もそれを伝えた後、Nさんに見送られるようにしながらNさん宅を後にしました。

 

お父さんとタロくん。続けさまに大切な家族を亡くしたNさんにとって、当分の間、寂しい日々が続くでありましょう・・・

しかし、お父さんとタロくんが残した愛情は、きっとその寂しさからNさんを包み、いつの日か、Nさんなら自分の力で乗り越えて行けると私は思っています。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一



 

大阪 ペット葬儀・火葬に関するお問い合せはプレシャスコーポレーションまで

大阪本社 大阪府守口市菊水通3丁目7-9

ペット葬儀・火葬のご依頼はフリーダイヤル:0120-982-660

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