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続 日常の中で起こった悲劇

思いもかけない、重い現実を聞かされた私は、返す言葉も見つけられなかったのでありますが、そのとき玄関のドアが少しだけ開きYさんの旦那さんが「すいませ。そろそろお願いできますか」と私に声をかけられたのでした。

「はい」と返事した私の後方にFさん夫婦がいらっしゃることに気付いたYさんの旦那さんは一瞬、視線をそちらに向けた後、無言で頭を下げて挨拶をされました。

Fさん夫婦も会釈されながら「昨日は・・・」とFさんの旦那さんが私の前に出るようにして「本当に何て言っていいのか・・・」と言いながら頭を下げました。

それを見たYさんの旦那さんも靴をはき、外に出てこられたのですが「はあ」と視線を落としたまま、その後はどちらの旦那さんも言葉が続かず重い沈黙だけが残りました。

 

そして、Fさんの奥さんが泣きながら「本当にすいませんでした」とその場に泣き崩れられそうになったので、私は咄嗟に奥さんの腕をつかみました。

そして、ご近所の数件の奥さん達が遠巻きにその光景を見ていたのに気付いた私はその視線から遠ざけるようにFさんの奥さんの脇を抱えるようにして、火葬車の後方に移動したのです。

Fさんの旦那さんが「もし、今からお葬儀をされるなら、奥さんやワンちゃんにも謝罪させてもらいたいのですが」と頭を下げて仰られたのですが、Yさんの旦那さんは「・・・はあ・・・まあお気持ちは受け取りますが、今、嫁がそんな状態じゃないんですよ・・・」と小さな声で言うのが精一杯でありました。

私にはFさん夫婦の自責と反省の念も、Yさんの憤りのお気持ちも、両方とも理解できました。

しかし、現時点で、優先して考えてあげるのはYさんの奥さんであると私は判断し「Fさん。Yさんが仰ったようにYさんの奥さんはかなりショックが大きくて不安定な状態です。Fさんのお気持ちはセレモニーが終わるまでに必ず私の口から奥さんにお伝えしますので、奥さん(Fさんの)もこのような状態ですし、今はいったん自宅の方に戻られたほうが良いのではないですか?もし、何かあれば私がそちらに伺いますので」と言いました。

少し間を置いて、Fさんの旦那さんが「・・・・わかりました」と言った後「すいません」と頭を下げながら奥さんを支えていた私に代わるように奥さんの肩を抱いて自宅に戻っていかれました。

Yさんの旦那さんも「なんかすいませんね」と私に声をかけてくださったので「いえ」とだけ返事をしてYさん宅に入りました。

リビングではCちゃんが祭壇に移されており、奥さんがCちゃんの口元と鼻先を優しく撫でていらしたのですが、戻った旦那さんに気付くと顔を上げ「何かあったん?」と訊ねられました。

旦那さんは「うん・・・お向かいさんが謝りたいって来てはってんけど・・・」と口篭りながら答えるを見て「・・・そんで?断ったん?」と涙を指で拭いながら問いかけられました。

旦那さんは「断ったというか・・・葬儀屋さんが・・・」と私の方を見て仰ったので、私は「お向かいさんのFさんご夫婦が、ちゃんと奥さんにもCちゃんにも謝罪されたいと仰っていらしたのですが、いずれにせよ、奥さんはご夫婦だけでCちゃんのセレモニーをされたいのではないかと思いまして、一度、自宅に戻ってもらえるようにお伝えしました。いけなかったですか?」と奥さんに訊ねました。

奥さんは首を横に振って「・・・いえ。ありがとうございます」と言った後「お向かいさんから(事故のこと)お聞きになったんですか?」と聞かれたので「はい。概ね話は伺いました」と私はこたえました。

Cちゃんから手を離し、背筋を伸ばすようにしながら座り直した後、奥さんは「お向かいさんは何て言うてはりました?」と私の顔を見ながら訊ねられたので、私は「ご夫婦とも、非があったことは認めてらっしっていますし、本当に申し訳ないことしたと言っておられました」とお伝えしました。

私と奥さんの会話を隣で聞いておられた旦那さんも「それはホンマ。ちゃんと謝ってはったし、向かいの奥さんはずっと泣いてはったわ」と補足されるように言われました。

奥さんは両手で顔を覆うようにしながら「それは私もちゃんとわかってるねん。良さそうな人達やし、悪気があってしたことじゃないってこともわかってる。轢いてすぐ助けてくれようともしはったし・・・実際、戸を閉めなかった私も悪いんやし、全部、向こうが悪いって思ってないよ・・・ただ、どんな顔していいのかわからへんもん・・・」とはき出すように苦しい胸の内は話したのです。

私は奥さんが本音でそう言ってることが伝わりましたし、頭では何もかもわかっているのに、気持ちがどうにもならないということも理解できました。

 

その後、Yさん夫婦は二人だけでCちゃんのセレモニーを執り行われました。

ご火葬は自宅の駐車場で火葬車で執り行われたのですが、駐車場はリビングの窓と隣接した場所であったので、Yさん夫婦はリビングから火葬を見守ることにされました。

私は火葬車の横で操作していたのですが、私の位置からはお向かいさんの家が視界に入り、お二階のベランダ越しに合掌されているFさん夫婦の姿が見えました。

Fさんの旦那さんと目が合った私は無言で小さく頭を下げた後、反対側のYさんのリビングの方に回り、そのことをYさん夫婦に伝えました。

Yさんの旦那さんは「・・・そうですか」と言っただけで、それ以上、何も口にされることはありませんでした。

 

火葬が無事に終わり、私はYさんの旦那さんの指示通りCちゃんのお骨をリビングに移し、お骨あげは自宅で執り行いました。

全てのセレモニーが終わり、帰る際、私はYさんの旦那さんに「なんと言いますか、私が口を出すことではないと思うのですが、やっぱりお向かいさんですし、これから毎日、お互い、顔を合わすこともあると思うんですよ。ですので、Fさんに何らかお伝えしたほうがいいと思うんですが・・・」と出過ぎた発言であることを承知で言いました。

旦那さんは視線を落としながら「・・・そうですね・・・でも、何を話したらいいのか・・・許すとしても、今はそんな気持ちになれないのも正直な気持ちなんですよ」とポツリと仰りました。

Yさんの奥さんも同じ意見のようで旦那さんの隣でCちゃんのお骨壷を抱いたまま終始、俯いておられました。

私は「では、そのことを伝えればいいと思います。『今はまだ話す気にもなれないので時間をおいてほしい』と。もし、よければ、私が代わりにFさんにその事をお伝えさせてもらってもかまいませんよ」と申し出ました。

「・・・そうですね。そうお願いできますか」と旦那さんは言った後「それでかまへんな?」と奥さんに確認をされました。

奥さんは無言のまま首を縦に振り、その拍子に目から大粒の涙が零れ落ちました・・・

私は「Yさん」と奥さんに話しかけ奥さんが顔を上げられたのを確認してから「僅かな時間でありましたが、奥さんのお気持ちは私なりに理解しているつもりです。Cちゃんがペットではなく、お二人にとって家族であり子供のような存在であったことも伝わりました」

そこまで言ったとき奥さんは肩を震わせて泣かれましが、私は続けるように「それも踏まえた上で、私なりにお二人の今の気持ちを代弁し、Fさんにお伝えしてきますね」と言いました。

奥さんは口を押さえながら「お願いします」と言いたげに頭を深く下げられました。

そんな奥さんの肩を抱くように旦那さんが「すいません。よろしくお願いします」と言ってくださり、私はお向かいのFさん宅を訪ねました。

Fさんご夫婦とは玄関でお話をしたのですが、私は「Yさんも、不慮の事故であると理解されていますし、ご自身にも落ち度があったと認めてらっしゃいます。Fさんの奥さんに悪意がないこともわかった上で、Fさん夫婦の誠意も伝わってはいるのですが、CちゃんはYさん夫婦にとって子供のように大切に育ててきたペットであるので、それらのことがわかっていても、すぐに気持ちが切り換えれないのも事実なんです。ですので、今は時間がほしいと言うのが正直な気持ちなんだと思います」と概ねそれらの事柄をお伝えしました。

 

Fさんの旦那さんは「そうですね。わかります・・・本当に申し訳のないことをしました」と玄関の板間に正座しながらそう仰いました。

「もう少し時が経てばYさんから何らかのお話があるかもしれませんし、何もないかもしれません・・・いずれにしても、今はそっとしておいてほしいというのがYさんご夫婦のお気持ちであるので、そのことをお伝えしにきました」と私は告げ、一礼をしてからFさん宅を後にしました。

その足で、Yさん宅に戻り、そのことを報告した私は、最後に「私のような仕事をしていますと、今回の事故と似たようなお話に直面することもあります。それは交通事故だけじゃなく、ペットがペットに危害を加えてしまうケースもあって、どのような場合でもご近所さんということで、被害を受けた側も与えた側もシコリが残るものですし、関係が崩れることは少なくありません。中には『目を離したお宅が悪い』と開き直る人もいて、そんな人に比べるとFさんは事実を真摯に受止めてらっしゃると思いました」と私個人の意見もお伝えしました。

 

Yさん夫婦は静かに頷きながら私の言葉を受止めてくださっているようでありました。

 

住宅街を離れるとき、何かやり残したことがあるような気持ちになり、角を曲がって道路に出るとき、無意識にバックミラー越しにYさんFさん両家の家を交互に確認をしていました。

今後、どのような形でご両家が現実と向き合っていかれるのかが、とても気掛かりではありましたが、私はいちペット葬儀屋の立場でしかないので、それ以上、踏み込んでお話できないことも事実であります。

Fさん宅に訪問した際、帰り際に「私に何か出来ることがあれば連絡ください」と名刺を置いていったのでありますが、私に出来ることなど、何も無いのかもしれません。

でも、そんな私でも何らかのお役に立てることがあるのなら、ご協力させてもらいたいと思っています・・・



 

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