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「決断」~隣人の愛犬が殺処分されると聞かされたとき~第二章

私は玄関先で膝をおり、かがんでゴールデンちゃんの顔を間近で見つめました。

昨年、初めて会った日、私を迎えてくれた時と同じように口角が優しく上り、まるで笑っているような寝顔でありました。

「きっと安らかに息を引取れたんだろうな・・・」と心で呟きながら私はゆっくりと立ち上がりました。

ご依頼があったとはいえ、ご家族が不在の家に長居することは非常識だと思い、私はもう一度、合掌をし、静かにドアを閉めて外にでました。

Mさん宅はプレシャス会館から10分ほどの場所だったので、私はその足で会館に顔を出すことにしました。

 

お昼前になり、セレモニーの時間近くになったので、私は支配人と二人でMさん宅に向かうことにしました。

Mさん宅に到着し、私は玄関先で迎えて下さったお母さんに不在中に花を届けたことをお伝えし、無断で玄関に入ったことを御詫びしました。

お母さんは丁寧に「ありがとうございます」と仰ってくださり、あらためて、玄関に我々を通してくださり、私はもう一度、ゴールデンちゃんに合掌をし、お母さんの許可を得て、ゴールデンちゃんの体に触らせてもらったのでありました。

そして、そのとき初めてゴールデンちゃんの名前が「リッキー」ということをお母さんから教えてもらったのです。

 

その後、ご火葬場所である駐車場まで移動し、大型犬用のマイクロバスの移動火葬車の中に設置された祭壇にリッキーちゃんは寝かせてあげました。

立会いをされたのは、お母さんと長女さんで、お父さんと長男さんは仕事のため、ご火葬には参列出来ませんでした。

お母さんと長女さんに続き、私と支配人もお焼香をあげさせてもらい、リッキーちゃんとの最後のお別れの時間を過ごしさせてもらいました。

そして、お母さんの「お願いします」の言葉を合図に祭壇のロックが外されリッキーちゃんを乗せた祭壇はゆっくりと火葬炉の中にスライドしていき、参列者が合掌で見送る中、火葬炉に納まりました。

この日は、氷点下近い冷え込みだったのでありますが、ご火葬の間、お母さんも娘さんも火葬炉から離れることはありませんでした・・・

 

火葬の間、お母さんと娘さんと私と支配人で、いろいろなお話をしたのですが、どうしても、私が昨年のブ~ちゃんのセレモニーの席で聞いた、「リッキーちゃんは隣人のペットだった」という言葉の真相をお聞きしたく、お母さんに訊ねたのです。

お母さんは少し寂しげな笑みを浮かべながら「リッキーをうちで引き取ったのは、今から二年前なんです・・・」と静かにお話をしてくださいました。

 

 

リッキーちゃんは元々、Mさん家のお隣さん、Aさん宅のペットであり、Mさん家とAさん家の玄関前の庭は低いブロック塀のみで区切られているだけで、どちらの家からも見渡せるほど、玄関先の庭は隣接しておりました。

Mさん家は二匹の猫とダックスフンドが1頭。Aさん家はゴールデンレトリバーのリッキーちゃんを1頭飼われていて、ご両家共に動物が大好きな家族でありました。

リッキーちゃんは人懐っこい性格で、日ごろから、お隣のMさん家族からも可愛がられていたらしく、Mさん家のペット達も毎日のようにブロック塀を乗越え、リッキーちゃんの小屋に遊びにいっていたそうです。

リッキーちゃんは自分の食べ物をMさん家のペット達が食べても怒ることのない温和な性格な犬ちゃんであり、Mさん、Aさん両家族もそんなペット達の交流を目を細めて温かく見守っていたそうです。

そんな、平和で穏やかな日々が当り前のように過ぎ、Mさん家もAさん家もそんな日が永遠に続くと思っていました。

 

そんな日常に暗雲が差し込んだのは二年前、リッキーちゃんは10歳の誕生日をむかえた頃でした。

 

Aさん家のご主人が病気でお亡くなりになられたのです・・・

遺されたAさんの奥さんと息子さんの悲しみは深く、一家の柱を失ったショックは計り知れないほど大きなものであったことは言うまでもありません。

そのショックを一番近くで感じていたのは、おそらくお隣のMさんも家族だったでありましょう・・・

 

Aさんのご主人がお亡くなりになって、しばらくした頃でありました。Aさんの奥さんが「ここを引越します・・・」とMさんのお母さんに、そう告げたのです。

引越す理由は一家の主を喪ったことによる経済的な理由なのか、それとも別の理由なのかはお聞きすることは出来なかったものの、Aさんの奥さんは息子さんと二人で別の町に引越しされることになったのです。

10年以上、友好な関係を築いてきたお隣さんがいなくなることは淋しいものであり、Mさんのお母さんは「さみしくなるわ・・・」と本心を伝え「私達、人間もそうだけど、ペット達もきっとさみしがるわね」と言葉を続けました。

Aさんの奥さんの表情が一段と影を落としたのは、Mさんのお母さんが「ペット」と口にしたときでした。

何かあると肌で感じたMさんのお母さんは「ねえ?どうしたの?リッキーちゃんも一緒に引越しするんでしょ?」とAさんの奥さんに訊ねました。

Aさんの奥さんは目に涙を溜めながら「・・・引越すところは、ペットを飼えないところなの・・・だからリッキーはつれていけないんです・・・」と思いもしない事実を告げたのでした。

Mさんのお母さんは「つれていけないって・・・どうするの?誰かに預けるってこと?」と驚きを隠さず訊ねたところ「いろいろ心当たりある人にリッキーのことお願いしようと頼んだんですけど・・・リッキーのような大きな老犬を預かってくれる人は見つかりませんでした・・・」とAさんの奥さんは悲痛な面持ちで答えたそうです。

「・・・じゃあ・・・どうするんですか?・・・」とMさんのお母さんは、おそるおそる訊ねました。

「もし、このまま預かってくれる人が見つからなかったら・・・役所にお願いするつもりです・・・」

そうAさんの奥さんは言ったそうです・・・

「え?役所って・・・?それって・・・」

その後、Mさんのお母さんは口に出来ませんでした・・・

同じようにAさんの奥さんも、その後は何も言葉にすることはなく自宅に戻られました。

Mさんのお母さんは無言でAさんの奥さんを見送っていたのですが、Aさん宅の庭の小屋の中で二人の会話を聞いていたリッキーちゃんはまるで自分が置かれた状況を理解しているかのように悲しい表情を浮かべていたそうです。

そんなリッキーちゃんを目にしたお母さんは、その視線を振り切るようにして、自分も自宅に戻りました。

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ペットブームの恩恵で、現在ではペット同伴可能なレジャー施設や宿泊施設も増えました。

同じく住宅事情もペットと一緒に住めるマンションも増加したことは事実でありますが、犬ちゃんの場合、1頭限定や小型犬のみ可能等の条件がつくことがほとんどであり、特に大型犬を飼う環境はあまり改善されていないのが現状であります。

日本の、ましてや大阪のような都会ではリッキーちゃんのような大型犬を飼うには一戸建ての住居が最低必要条件であることに変わりはなく、大型犬と取り巻く国内の環境はむしろ、悪化していると私は思っており、そのことが原因かは定かでありませんが、大型犬を飼う人の割合は減少傾向にあります。

バブル期は日本経済も好調(正確には浮かれていただけ)で街には大型犬を何頭も引き連れて散歩している人を多く見かけました。

当時は大型犬を飼う大変さがわからないまま、ステータスかのようにドーベルマンやシェパード等の大型犬を購入する人がたくさんいて、私の記憶が正しければカメラのCMに登場したことをきっかけにゴールデンレトリバーの人気にも火がついたことを覚えています。

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10年間共に暮らしたペットに、そのような決断をせざるをえないと決めたAさん家族にもいろいろな事情があったことは想像できます。

そのことがわかっていたからMさんのお母さんも何も言えなかったのです。

しかし、あまりに可哀想すぎる・・・

いくらお隣さんのペットとはいえ、リッキーちゃんはMさんにとっても、自分のペットと同じような存在でありました。

自分の家族がリッキーちゃんを引取れば、全て丸く収まる。もちろんMさんもそのことは真っ先に頭に浮びました。

しかし、うちには既に猫2匹と犬も1頭いる。いざリッキーちゃんを向かえるにしても、玄関前のスペースはAさん宅と同じ広さがあるとして、物置や子供たちのバイクや自転車置場に使っていた現状や、なにより、食事代を含めた大型犬を飼うことでかかる費用が少なくないことも頭をよぎりました。

それはAさん家族も理解してた故、いくら親切で良心的なお隣さんであるからといって、お願いできなかったのかもしれません・・・

Mさんのお母さんは、Aさんの奥さんから衝撃の事実を聞かされてからは沈んだ気持ちのまま毎日を過ごしたそうです。

外に出るたび、いやがおでもリッキーちゃんの姿が目に入り、待ち受ける残酷な運命を想像するだけで胸が詰まりました・・・

そして、その日、Mさんのお母さんはリッキーちゃんのことを家族に相談したのであります。

事実を聞かされた家族全員は驚き、悲しみ、嘆いたそうでありますが、だからと言って、大型犬を引取る大変さも同時に理解していました。

しかし、お母さんは、そんな家族を説得し、リッキーちゃんを引取ることを決めたのです。

 

その事を一番喜んだのは、もちろんAさん家族で、中でもAさん家の一人息子さんは涙を流して喜んだそうです。

そして、Aさん家族が引越しする日、リッキーちゃんはMさん家に引取られ、Mさん家族と一緒にAさん家族を見送ったそうです。

リッキーちゃんは事情を理解していたのか、寂しげにAさん家族を見送ってはいたものの、その日からMさんの家族の一員として、今まで変わりない温和な表情を浮かべ、新しい生活をスタートさせたのでありました。

Mさん家族が新しい飼い主になったことはリッキーちゃんにとって最善のことであったのは間違いなく、それはMさん家族がとても優しい人ばかりであることを、誰より知っていたのはリッキーちゃんであり、そのことはAさん家族にとっても同じでありました。

おそらくAさん家族は感謝と安心の心を置いて引越して行かれたに違いありません。

 

ブログのスペースが無くなりましたので、Mさん家族とリッキーちゃんとの新しい生活とリッキーちゃんが神様のもとへ旅立つまでの話は次回に紹介させていただきます。

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