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続 忘れられない飼い主さん

私はS子さんから事前に聞いた、ご自宅の右側面にある車専用のゲートからお屋敷に入りました。

駐車場ではS子さんが待機していてくれ、私はS子さんの誘導のもと、一番左側の玄関に近い場所に火葬車を駐車し、S子さんに案内されるように玄関に通された私を二人の男性が出迎えてくださったのですが、この二人の男性はS子さんのお兄さんと弟さんでありました。

弟さんが私に「ちょっとうるさい母ですけど、よろしく頼みますね」と笑顔で言ってくれたので、私は少し緊張感がほぐれたこともありますが「任せてください」と大見得をきってしまいました。

社交的な印象の弟さんにくらべ控え目な印象のお兄さんは「多少、横暴な言動があると思いますが母は根は悪い人じゃあないんで、我慢してあげてください」と静かな声で頭をさげながら仰ってくださったもで、私はお兄さんに頭を下げ「わかりました」と小さく返事しました。

ご兄弟と挨拶を交わした私はS子さんに連れられるようにしながらリビングのドアの前まで行き、S子さんはドアをノックしながら「お母さん。葬儀の人見えられましたよ」と言いながらドアを開けました。

S子さんに招かれるようにリビングに入った私の目に高価なガラステーブルの上にたくさんの花と一緒に毛布で包まれたサンちゃんの姿があり、サンちゃんの前には線香とロウソクがあげられていたのですが、その備え品は当社のものより、ずっと高価な物でありました。

そして、サンちゃんの向こう側の椅子に腰掛けながら、体の正面の杖に両手を乗せた状態のTさんと対面したのであります。

私はその場から「プレシャスコーポレーションの野村です」と一礼をしながら押さえ気味にもしっかりとした口調で自己紹介をしました。

Tさんは、まっすぐ私の顔を大きな目で見るようにしながら、一呼吸おいて「そうですか」とだけ仰りました。

Tさんは度の強い大きな眼鏡をされておられたせいか、私には顔半分が目のように見えました。

そして、座ったままお杖を持たれてることから、足がお悪い様子が伺えましたが、顔色も良く、色白で艶の良い肌をされており、髪は白髪ながらもボリュームのあるカールがあって、とても上品な印象を与える方でありました。

そして何よTさんの醸し出す雰囲気はご高齢の女性とは思えないほど、存在感に満ちたものであり、正直、私はその雰囲気にのまれそうになったのです。

私はS子さんに「どうぞ」と招かれるようにしながらサンちゃんの祭壇の前まで歩みよりました。

その間もTさんは私から視線を外されることはなく、サンちゃんの前まで来た私に「で、どないしはるのや?」とお訊ねになられたのでした。

私は一呼吸おいてからTさんに「まず、お亡くなりになられたサンちゃんに手をあわさせてもらいたいのですが」と言いました。

Tさんが「ええよ。あわしたって」と仰ったので、私は膝を折りたたみサンちゃんに合掌をあげさせてもらったのです。

時間にして30秒ほどサンちゃんに手をあわしたのですが、目をつぶっていても、Tさんが私のことを見ているのが伝わってきました。

私はサンちゃんに心の中でお悔やみを告げた後、合掌をほどき目をあけてあらためてTさんの顔を見たのですが、Tさんは瞬きもせず私の顔を静かに見つめておられました。

そして「そんで、どないしはるんや?」とTさんが私に言ったとき、後方にいらしたS子さんが「お母さん。来てくれはってすぐに次から次へと質問されたら困りはるやん」と私を気遣って言ってくれたのですが、Tさんは「何も質問してへん。次はどうないするか聞いてるだけや」と言い、それを聞いたS子さんは「だから、それを質問っていうんじゃないですか」と負けずに言い返さたので、私は二人の会話に割って入るように「すいません。もしお許しいただけるならサンちゃんの体に触れても構いませんか?」と切り出しました。

過去にもブログで書いたように、私が亡くなったペットちゃんに触れさせてもらうことは、必ずさせてもらっていることであり、今回は一瞬、どうするか迷ったのですが、最終的には普段通りしようと決めていたので、そのようにTさんに訊ねたのです。

Tさんは、驚いたように私の顔を見ながら「触れるってどういうこと?」とお聞きになられたので「はい。私の手でサンちゃんの体を撫でたいのですが、いけないでしょうか?」と再度、確認をしました。

Tさんは困惑気味に「何か意味ありますのか?」と聞かれたので「いえ。意味があるということではないんですが、私はいつもそのようにさせてもらっているので」とTさんの目を見てこたえました。

「まあええよ。撫でたって。この子は撫でてもらうの好きやったから喜びやるわ」と言ってお許しくださったので、私はサンちゃんの右前足の肉球を左手で握りながら頭部と顔を左手で撫でさせてもらいました。

その様子を見ていたTさんが私にむかって「あんた犬が好きか?」と訊ねられたので、心の中で(犬ってNGワードのはずやのに普通に言ってはる)と思いながら「はい」返事しました。

「犬が好きやからこんな仕事してはんのか?」と、さらにお訊ねになられたので私は「もちろんそれもありますが、それ以上に動物を大切にされる人が好きだから、そんな人達のお役に立ちたくて、この仕事をしています」とサンちゃんの体を撫でながらこたえました。

Tさんは「いつも、そうしてるの?」とサンちゃんを撫でてる私の手をアゴで示しながら言ったので「はい。ご家族の方に許可してもらったら触れさせてもらいます」とこたえました。

そして「でも」と私は前置きしながら「好きだから撫でているというよりも、私をこの場に呼んでくれたことを感謝する意味で撫でているんです」と説明をしました。

「呼んでくれた感謝?どういうこと?」とTさんは顔を曇らせて聞かれたので私は「もちろん、私にお電話くださったのはご家族の方ですが、そうなるように導いてくれたのはサンちゃんだと思ってるんです」と答えた私にTさんは「そう思うのは勝手やけど、残念ながらハズレやで。何でか言うたらな、実は葬儀屋頼んだのはアンタのとこで2件目やからや。最初は違うとこ頼んだんやで」と口元を少し緩めて仰いました。

私は「だからですよ。一件目の業者がダメだったからサンちゃんは私を呼ぶように家族の方に見えない意識で伝えたんじゃんじゃないですかね?」と表情を和らげて言いました。

私がそう言った後、時間にして10秒ほどTさんは何か言いたげに私の顔を目を見開いて見ておられたのですが、両肩の力を抜くように溜息をもらし「けったい(変わった)なこと言う人やな、あんた」と呟くように言った後、リラックスするように椅子の背凭れに、もたれ掛かられたのです。

内心、失言だったのかなと思ったのですが、Tさんは私の発言を咎めることはなく、その後、30分ほど生前のサンちゃんのお話を聞かせてくださったのでした。

サンちゃんは本当に大人しく優しい犬ちゃんだったようで、いつもTさんの傍から離れない寂しがりやの一面もあったそうです。

そして、私とおTさんのヤリトリと後ろで、やきもきしながら見ておられたS子さんにTさんは「葬儀屋さんにお茶か何かいれたり」と声をかけたのでした。

私はS子さんを振り返り「ああ。気を使ってもらわなくていいです」と言ったのですが「かまへん」とTさんが間髪入れず言ったので、S子さんは笑顔で「野村さん。日本茶も紅茶もありますけど、コーヒーがいいですか?」と聞いてくださったので私は恐縮しながら「では日本茶を」と答え「それと・・・誠に申し訳ないのですが・・・お手洗いをお借りできますか?」と頭に手をやり言いました。

私はTさん宅に来る前にコンビニでお手洗いを済ませていたのですが、自分が思っているよりTさんとの対面に緊張したようでありました。

S子さんは笑みを浮べながら「どうぞ。こちらです」と案内してくださり、私はS子さんに連れられるようにしてリビングを出ました。

リビングを出た私は小声でS子さんに「どんな感じですかね?」と自身の対応のことを伺いました。

S子さんは「いいです。いいです。さすがです」と笑顔で仰ってくださったので私は「第一関門は突破ですかね?」と私も笑顔で確認をしたところ「突破!突破!お茶を出すというのが母が気にいった証拠ですから」と茶目っ気たっぷりにS子さんは親指を立てながら嬉しそうに言ってくてたのでした。

それを聞いた私は「ホッと」胸を撫で下ろしトイレに向かいました。

 

お手洗いを済ませ、リビングに戻ったのですが、S子さんはまだ、台所でお茶を煎れておられたようでありました。

リビングで二人きりになった私を見るTさんの目は先ほどまでとは別人のように優しいものに変わり「かまへんから足崩して、こっち座り」とソファーを指さしながら言いました。

少ししてS子さんがお茶を持ってきてくださり、その後、S子さんもソファーに腰掛けようとされたとき、Tさんは「あんたお茶いれたら外でとき。ちょっとこの人(私のこと)と二人で話したいから」と言って杖でドアの方を示しました。

S子さんは苦笑しながら「はい。わかりました。お邪魔様です」と言ってリビングから出ていかれたのです。

その後、私はTさんと色んなお話をしました。

サンちゃんのことやTさんの三人のお子さんのこと。そして私の仕事のこともTさんは関心があるようで、色々とご質問をされていました。

作法に厳しいという顔を一枚めくればお話好きのカワイイお祖母ちゃんというのが私が受けたTさんの真の印象でありました。

Tさんは私の話に時折、声を出してお笑いになることもあり、気付かぬうちに、時間は過ぎていきました。

そして二人でお話をしだして2時間ほど過ぎ、そろそろご出棺の準備をしましょうかとお話をしてたときにS子さんがドアをノックされてからリビングに入ってこられ「お母さん。野村さんも忙しいねんから、あんまり長く引き止めたら迷惑やよ」と少し顔を曇らせながらTさんに言いました。

「わかってる。今、火葬してもらおうと思ってたとこや」と杖をつきながら立ち上がり「どうしたらいいのや?」と私に訊ねました。

私は「もしよろしければ私がサンちゃんを抱いて火葬車まで連れていきますが?」と言ったのですが「かまへん。サンちゃんは私が抱いて連れて行く。S子、悪いけど杖もって」とS子さんに杖を渡しました。

そしてTさんは両手で優しくサンちゃんを抱き上げ「サンちゃん行こうか」と静かに語りかけるようにしながら、良くない右足を引きずるようにしてゆっくり歩き出されました。

私はTさんをエスコートするようにTさんの腰のあたりに手を添えたのですが、Tさんは「ありがとう。大丈夫。サンちゃんくらい軽かったら私一人で抱っこできる」と言って玄関を出て火葬車までお運びになられたのでした。

その後、サンちゃんはTさんと三人のお子様が見守る中、火葬車で天に召されました。

ご火葬の間もTさんは数珠を手にずっとお経を唱えておられ、お骨あげもお一人でされていました。

ご火葬とお骨あげが無事に終わり、全てのセレモニーを終えて、帰る私にTさんは「これ私の気持ち」と言ってお金の入った封筒を手渡してくれました。

ご遠慮しようとも思ったのですが、Tさんのような人の、このようなご好意をお断りすることは、逆に失礼にあたると思った私は「ありがとうございます」と頭を下げて両手で受け取りました。

玄関先まで私を見送ってくださったTさんは「近く寄ることあったらいつでも来てくださいな」と笑顔で言ってくださり、私は「はい。必ず」と返事をしました。

深く頭を下げて玄関のドアを閉めた私を三人のお子さん達が待っていてくださり「いや~ありがとうございました」と労いの言葉をくださいました。

S子さんの弟さんが「失礼ですけど、最初、野村さんを見たとき『こりゃあかん』って思ったんですけど、見事にやって下さいましたね」と笑顔で仰り、それを聞いたS子さんは「失礼やであんた。私はこの人なら絶対にいける(大丈夫)って信じてた」と誇らしげに言ってくれました。

「何はともあれ、無事にサンちゃんのお見送りできたので、良かったと思います」と笑顔で言った私にお兄さんが「本当にありがとうございました。これ僕達からの気持ちです」と言って封筒を差し出したのです。

私は「いえ。先ほどお母さんからももらいましたので、お気持ちだけで充分です」と受取りを拒んだのですが「それはそれ。これは僕らの気持ちですから」とお兄さんは私の胸ポケットに封筒を入れました。

「いや・・・でも・・・」と困惑気味に返事した私にS子さんが「野村さん。ほんまに気にせんとって下さい。時間もかなりオーバーしたし、心から感謝してるので」と笑顔で仰ってくださりました。

「そうですか・・・では有難く受け取らせていただきます」と私は三人のお子さん達に一礼をし、お屋敷を後にしたのでした。

 

帰りの車中で私はTさんと二人で話した時のことを思い出し、本当に可愛い人(目上の人に使うのは失礼な言葉ですが)だなと思いました。

そう思うと同時に人生の先輩として私に教えてくださった貴重なご意見は本当に大切なことばかりでありました。

社交辞令で言ってくれたのだとは思いますが、本当に近くに行くことがあればTさん宅を訪ねようと思っております。



 

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