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「母として」今までで、いちばん緊張した火葬~うずらの雛の火葬~最終回

無事にお骨上げを終えられた飼い主さんから感謝の言葉をいただいたとき、私も、ようやく緊張から解放された気持ちになりました。

 

そして、私はこのタイミングで、どうしても聞きたかったことを飼い主さんに訊ねたのです。

 

それは「こらだけ小さな雛ちゃんなら、家に埋葬することも可能だったと思うのですが、なぜ火葬することに決められたのですか?」という質問であります。

 

そう聞かれた飼い主さんは、手にしたカプセルを見つめながら、控え目な声で「・・・やっぱり、ちゃんと(お見送り)してあげたかったからです」と言われたのです。

 

もちろん私もその気持ちは理解できますし、わかっていたのですが、しかし、私が聞きたかったのは、生後2日、つまり48時間しか一緒に居ることが出来なかったペットに、なぜそこまでの強い想いを持たれたのかということでありました。

 

ですので、それを踏まえ、「今まで当社で、生後2日の小鳥の雛ちゃんを火葬された方はいませんでした。2日の間に何か特別なことがあったんですか?」と、私は訊ねたのです。

 

飼い主さんはゆっくりと首を振り「2日ではありません」と仰りました。

 

その言葉に一瞬、私は(え?)と思ったのですが、飼い主さんは続けるように「たまごのときから、ずっと大事に育ててたんで・・・自分の中では2日ではないんです・・・」と補足するようにして、そう言われたのです。

 

それを聞いた時、私は自分の質問が愚問であったことに気付きました。

 

「そうだったんですか・・・たまごのときから育てておられたんですね。すいませんでした、くだらない質問をしてすいませんでした」と、率直に頭を下げたのです。

 

頭を下げながら私はあることを思い出していました。

 

それは、うずらの卵は、食品用にスーパーで売られているものであっても、ごくまれに有精卵の卵があり、それを適温で温めながら、約5時間置きに転卵※(ゆっくり回転さすようにすること)してあげると、約半月後、卵が孵ることがあるという事実であります。

 

そのことを知っている一部の人が、卵から、うずらを育てると、聞いたことがあるのですが、今回の飼い主さんも、そのお一人であったのです。

 

卵を孵(かえ)すというのは、先程も言ったように孵るまでの間、温めながら定期的に転卵してあげることが最低条件であり、それは、言葉にするより大変なことであります。

 

おそらく、そのとき飼い主さんは母鳥の気持ちになって、大切に育てておられたに違いありません。

 

だから雛が卵の殻を破って生まれてきたとき、言葉にできぬ感動を覚え、そのときから雛は飼い主さんにとって特別な存在であり、その瞬間、まさしく「母と子」の関係になったのでありましょう

 

私は頭を上げ「飼い主さんというより、お母さんだったんですね」と、飼い主さんに言いました。

 

飼い主さんは、少し照れたように笑みを浮かべ、「はい・・・」静かにうなずかれたのです。

 

そして、もう一度、私に頭を下げて帰って行かれたのですが、飼い主さんの手には雛ちゃんのお骨を収めたカプセルが大切そうに握られていました。

 

その姿を見送りながら、なんだか胸が熱くなるのを感じた私は、一つの課題が出来たと感じていました。

 

それは、今まで最小だった文鳥やジャンガリアンハムスター用のトレイより、もう一回り小さな火葬用トレイを制作しなければいけないということであります。

 

もしかしたら、今回の飼い主さんのように、今後、生後間もない雛の火葬をされる方が増えるかも知れない・・・

 

そのときのために必要なものであるなら、すぐにでも制作しよう。

 

そう思ったのです。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

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