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「最後の仕事」再会を実現してもらうべく~探偵さんと同行した二日間~最終回

Rちゃんが入っていった民家の窓を見つめながら、私はNさんに「そうですね。Nさんの判断が正しいですね。」と、つぶやくように言いました。

Nさんは「見たところ、出入りできるのは、この窓の隙間だけなので、住民さんが起きてこられるまで、ここで見張っていればRちゃんもどこかに行くことはないんで、無事に保護できると思います」と力強くうなずかれたのです。

 

ちょうどその時でした。Rちゃんが出入りしたのとは別の閉じられた窓のカーテン越しに姿を現し、外の様子を伺うように顔を覗かせたのです。

それに気づいた私は「Nさん・・・Rちゃんです」と顔でその方向を示しました。

「本当だ・・・Rちゃんですね」とNさんは言いながら、素早くカメラを取り出し写真を撮っておられました。

 

私同様、実物のRちゃんを初めて見たNさんではありましたが、目にした、その真っ白な体、特徴のある尻尾、そして、なにより手術痕の上に溜まった目ヤニが、この猫が探し求めていたRちゃんであると、強く確信する要素になったのは間違いありません。

Rちゃんは、すぐに顔を引っ込めましたが、Nさんは、三枚、Rちゃんの姿を写真に収めたのです。

 

窓の隙間から入った姿もそうですが、Rちゃんは明らかに、この民家に慣れた印象を私は受けました。

少なくとも、今さっき、初めて入ったようには見えなかったのです。

 

その時、Nさんの携帯が鳴りました。

Nさんは「飼い主さんだ」と言いながら電話をとり、民家から少し離れた場所で、小声で状況の説明をされていました。

電話を切ったNさんは「さすがに飼い主さんも眠っておられたようです。事情を説明したら、用意して、すぐに来ると仰っていました」と言った後「それより野村さん。時間、大丈夫ですか?」と腕時計を指さしながら言われたのです。

 

時刻は午前4時を少し回っており、すでに、リミットを一時間以上過ぎていました。

「そうですね。そろそろ、出ないといけない時間ですね」と私は苦笑いをしながらNさんに言いました。

 

Nさんは「後は住民さんが起きられる時間まで、ここで待ちます。そして、飼い主さんと一緒に、訪ねるようにします」と言った後「Rちゃんを見つけてくれた野村さんの努力は無駄にしません。僕が責任を持って最後まで見届けますので、安心してお仕事に戻ってください」と言ってくださったのです。

 

事の成り行きを最後まで見届けれないのは、とても残念だったのですが、さすがに、仕事に穴をあける訳にはいかず、私は、ここが自身の活動の終了時だと思い「わかりました」と返事をしました。

 

青みがかった空を見上げながら、私は両手を広げ、大きく伸びをした後「Rちゃんと飼い主さんの再会の場面をこの目で見れないのは残念ですが、本当に貴重な経験が出来ました。Nさんありがとう」と右手を差し出しました。

Nさんは私の右手を両手で握り返しながら「こちらこそ。野村さん本当にありがとうございました」と頭を下げてくださった後「でも、野村さん。やっぱり野村さんは『持ってる人』でしたね^^」と言ってくださったので「どうですかね。僕は最後にRちゃんと偶然に遭遇して、ここまで追跡しただけですから」と謙遜気味に私が言うとNさんは「その日の捜索の終了間近にミラクルが起きることはよくあるんですが、今日のミラクルは野村さんが起こしたミラクルだと思います」と称賛の言葉をくださったのです。

「でも、Nさんが言ってたように、Rちゃんを見つけたとき、本当に言葉では表現できないような感動がありました」と、私が言うと「そうでしょ?あの瞬間、全ての苦労も努力も報われるんです。そして、この感動こそが、この仕事の最大の喜びであり、僕がこの仕事を続けてこれた最大の理由でもあるんです」とNさんは言われました。

そして、Nさんは「実は、この仕事は僕にとって、今の探偵事務所の最後の仕事でもあったんです。だから、無事に見つけれて、これで悔いなく、終わることができました」と、思いもしなかったことを口にされたのです。

「ええ!?最後って?探偵を辞めはるんですか?」と私は驚きを隠さず大きな声で聞き返すと、Nさんはゆっくりとうなずき「はい。辞めます」と、きっぱり言われました。

「なんで辞めるんですか?」と、さらに私が不服がそうに言うと、Nさんは「辞めると言っても、探偵事務所を辞めるだけで、ペット探偵は続けます」と、言われたので「え?どういうことですか?」と私が訊ねるとNさんは笑顔になって「野村さんが飼い主さんにとって、理想のペット葬儀会社をつくろうと思ってプレシャスコーポレーションを設立されたように、僕も、同じように飼い主さんから見て理想的なペット探偵社をつくってみようと決めたんです」と言われたのです。

Nさんの言葉の真意を理解した私は一気に肩の力が抜け、熱いものが込み上がってくるような感覚になり「そうですか・・・それなら賛成です・・・すごく賛成です。是非そうしてください」と、何度もうなずきながら握手した右手に力を込めました。

 

Nさんは、民家の窓の前から離れられないので、私はその場でNさんと別れました。

別れ際、Nさんに「Nさん。落ち着いたら、連絡くださいね」と私は伝え、Nさんは「はい。必ず。新しい連絡先も決まったらすぐ知らせます。」と言われた後「それから、また大阪で仕事があるときは、必ず連絡します。その時は野村さんを正式に助っ人としてお願いするこかもしれないんで、お願いしますね^^」と茶目っ気っぽく言われたので、私は力こぶしをつくって「任せてください( ̄ヘ ̄)┛」と返事をし、仕事に向かいました。

 

早朝のセレモニーの最中、NさんからメールでRちゃんと飼い主さんは無事に再会をはたせましたと、報告がありました。

この日、一睡もせず、ペット葬儀の仕事を数件こなしましたが、不思議と疲れは感じませんでした。

それは、Rちゃんを見つけることができたことと、Nさんと別れ際に交わした会話の余韻が残ったまま、仕事をしたせいかも知れません。

 

いずれにせよ、私はこの日、心地良い疲労感と清々しさを感じながら無事に仕事を終えることが出来たのです。

 

私にとって、Nさんに同行させてもらった二日間(実質)は貴重な体験であり、忘れることのない二日間になるような気がします。

 

Nさん。

貴重な経験をさせてくださってありがとうございました。

また、大阪で捜索依頼があるときは出来る限りの協力をさせてもらうつもりです。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一



 

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